新ガイドラインの「はじめに」では、そうした時代認識を論じた。
「AI技術の進化は今後さらに加速することが予想され、活用範囲も拡大することが見込まれている。AI技術は、豊かなデジタル社会を支えるキーテクノロジーとして、あらゆる分野のあらゆるアプリケーションや端末に実装(機能の組み込み)されることが予想されている。社会や個人を支える目的であらゆるサービスのフロントヤード(住民との接点)やバックヤード(内部事務)に、当然のように実装される時代がすぐそこまで迫っている。人類はすでにAI不可避な時代に突入しようとしている」というのだ。
特に人口が53万人強と全国最少の鳥取県では、過疎化・少子高齢化の進行が引き起こす課題の解決に、最先端技術が大きな役割を果たす場合がある。人口減少に伴う行政のスリム化も差し迫っていて、AI技術は次の時代を見通すカギの一つになっている。
このため、レベル3の「要注意業務」、レベル2の「要配慮業務」は、リスクを把握したうえでAI技術を使っていくことにした。
そのうち、より高リスクのレベル3は「リスク管理、データガバナンス(データの入手から管理、利用、廃棄までの適切な運用)、セキュリティ確保を特に注意し活用」とした。
想定される行政ジャンルは「県民の生命・財産に大きな影響を及ぼす、社会インフラの安全確保に係る業務」「教育など機微情報を取り扱う業務」「各種給付金や支援制度に係る業務」と例示している。
平井知事は会見で二つの現場での利用について言及した。
そのうちの一つは、災害時の状況分析だ。
平井知事が不安を口にした“AI任せ”とは?
災害時のAI利用は、多くの自治体で始まっている。鳥取県も「AI防災チャットボット」の活用を検討してきた。県・市町村・消防団からSNSで集めた被災現場の写真や位置情報をAIで分析し、地図に表示するなどして災害対応につなげる仕組みだ。今後は他にも多くのシステムが導入されていくだろう。
だが、平井知事は「災害の状況判断を完全にAI任せにしてしまうと、むしろ深刻な事態を招く恐れがあります。例えば、命が失われかけているのを見逃すかもしれない」と不安を口にした。
災害は被害が激しい現場ほど情報が上がってこない。2024年1月1日に発生した能登半島地震でも、家屋が軒並み倒壊した地区や、津波で4~5m以上浸水した地区がどうなっているかは、時間が経過しないと分からなかった。そうした中でも救助は時間との勝負だ。AIが画面に表示するのは、あくまでも情報の一断面であることを、肝に銘じておかなければならない。
もう一つ、平井知事が挙げたのは自動採点システムだ。
試験の答案用紙をスキャンしてコンピュータに取り込み、模範解答に照らし合わせてAIに自動採点させる。既に全国の学校現場で導入が始まっており、教員の過重な時間外勤務が削減できるとされている。鳥取県では2021年度から県立高校で導入を始め、足羽英樹・県教育委員会教育長は「非常に効果を上げている」と議会で説明した。