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鳥取県のAI婚活マッチングサービスの結果は…

 それから、AI婚活マッチングシステム。これは鳥取県が開設し、県法人会連合会が運営している「えんトリー(とっとり出会いサポートセンター)」が既に利用している。AIが登録者同士をマッチングさせて、見合いにつなげるのだ。

 同センターでは、昔ながらの仲人による出会いも行っているが、AIによるマッチングはかなりの成果を挙げている。2024年5月にお見合いが成立したのは、仲人が33組に対して、AIマッチングは26組。カップルが成立したのは、仲人が13組に対して、AIマッチングは12組だった。

 平井知事は会見で「自動応答のAIチャットボット、そしてAI婚活マッチングシステム。いずれも便利なものですが、結果はアルゴリズム(コンピュータの作業手順)という計算式に基づいて出てくるので、過程がどうなっているかは、我々にはブラックボックス的になっています。AIの回答の“くせ”をちゃんとつかんだうえで、『あっ、これはいかんな』という場合はサービスを提供しないということも考えなければいけません」と話した。

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AI婚活マッチングシステムで結ばれた皆さんのコメント(「えんトリー」のHPより

 こうしてレベル4~レベル1の分類に応じて使っていくことになったのだが、職員の中にはデジタルに詳しい人もいれば、そうでない人もいる。リスクに対する考え方も個人差があるだろう。自分の担当業務で使われているAIがどのリスクレベルに該当し、何に気をつけて使わなければならないか、迷う場面があるに違いない。

 そこで、県は職員を対象とした研修を始める。デジタル局には相談窓口も開いた。

 下田局長は「使われているAIがどのような特性を持つか、業者に聞く時にサポートが必要なこともあります。ただ、そうして考えていくことが重要なのです。新しいガイドラインでは、AIがどのリスクレベルに該当するか、職員は自動的に考えていかなければなりません。そうしたところも狙いの一つです」と秘められた効果について説明する。

 つまり、「あくまで人間が考えて使っていこう」という呼び掛けが、新ガイドラインの主旨なのだ。

「機械任せにしない。県は困った人などのニーズを吸い上げて仕事をする必要がある」

 下田局長は「人間は100%ではないけど、技術も100%ではありません。人間は100%ではないから機械に頼ります。でも、その機械も100%ではないということを、十分に認識しておかなければならないと考えています。技術が悪いというより、技術に任せてしまうことに問題があるのです」と指摘する。

下田耕作・鳥取県デジタル局長

 公表された新しいガイドラインは「人間主導AI(えぇ愛)ガイドライン」と名づけられた。

 これには深い意味がある。平井知事は「機械任せにしない。県は困った人などのニーズを吸い上げて仕事をする必要があります。ですから、AIに頼らずに電話や電話相談、あるいは関係団体に行くとか、アウトリーチ(訪問支援)型でアプローチしていくとかという手段も含めて、汗をかいていかないといけないわけです。愛情をもってやっていく『えぇ愛(鳥取の言葉でいい愛)』ということも重要でないかと思います。単なるアルファベットのAIだけではないよ、という意味なのです」と述べた。

撮影 葉上太郎