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佐藤 車が壊れた場所から次の町まで、まだ100kmある。でも、どこをどうやっても動かない。運転手も1時間ほど車と格闘してましたが、「もう完全に壊れたよ」と諦めちゃって。しかも悪いことに、夕方5時くらい。太陽が沈み始めていました。

2007年、マリの世界遺産トンブクトゥ。着いたところまではよかったが…(本人提供) 

──サバンナのど真ん中だと、助けを呼ぼうにも誰も通らないですよね。

佐藤 はい。運転手は座り込んじゃうし。実はその時、車にもうひとり乗っていて。トンブクトゥでドライバーが勝手に乗せた男が一緒だったんですが、そいつが「俺は道をよく知ってるから、歩いていこう」と言うんです。

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2007年、マリのサバンナの真ん中で壊れたランドクルーザーと座り込む運転手(本人提供)

──あやしすぎます。しかも、町まで100kmあるんですよね?

佐藤 徒歩でサバンナ100kmはさすがに無理です。すると彼が「20km先に村がある。そこで車を借りればいい」と。ただ困ったことに、そいつは車の運転ができない(笑)。運転手はもう座ったまま動かないし、仕方なく、僕と謎の男で20km先の村まで歩くことになりました。

「大きな車載トラックが来るから、それに隠れて乗り込もう」

──夕方のサバンナを20km、怖いですね。

佐藤 日没で動物の遠吠えが聞こえるし、夜になっても気温は35℃以上だし……怖いので歌いながら歩き続けたら、脱水症状でフラフラになって村に辿りついた次第です。その後、腐ったような味の牛乳を一気飲みして回復しました(笑)。そこでトラックを借り、僕の運転でランクルの所に向かい、スーツケースと運転手をピックアップして村に戻りました。

──でもランクルは放置したままで、何も解決してないですよね?

佐藤 そうなんです。でも僕は出国の時間が迫って、空港に急ぐ必要がありました。そこで例の男が「今から大きな車載トラックが来るから、それに隠れて乗り込もう」と。