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超早期であれば、転移リスクがほとんどない

 大腸がんが粘膜にとどまる超早期に発見することができれば、転移のリスクがほとんどないので、外科手術をしなくても内視鏡だけで治療することができる。かつては、大きさが約2センチまでの腫瘍しか内視鏡では取ることができなかったが、胃がんと同様、内視鏡の先端から小さな電気メスを出して、粘膜をはぎ取る「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」という方法が普及して、10センチを超える腫瘍も切除できるようになった。

 超早期の大腸がんと診断された場合は、ESDができないか、医師に聞いたほうがいいだろう。ただし、大腸は内視鏡の操作が難しいうえに腸壁も薄いので、まれだが穿孔(穴を開けること)のリスクがある。ESDを選択した場合には、経験数の多い内視鏡治療医の下で受けるとともに、穿孔や出血があった場合でも、外科医がすぐにバックアップしてくれる体制があるかどうか確認してほしい。

 がんが粘膜下層より深く潜り込んでいる場合は、転移のリスクが高くなるので、原則的に手術となる。その方法には、開腹手術と腹腔鏡手術があるが、近年は小さな穴を数ヵ所開けるだけで済み、回復も早い腹腔鏡手術が普及している。

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 とくに大腸では、開腹手術だと癒着が多く、腸閉塞で再手術となることもあるので、腹腔鏡手術のメリットが大きい。慣れている病院では進行がんにも適用を拡大し、大腸がんの9割を腹腔鏡手術で行っているというところもある。

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 ただし、腹腔鏡手術にも注意点がある。大腸がんは、できた場所によって「結腸がん」と「直腸がん」に分けられる。これらのうち、結腸がんは比較的手術が易しいが、骨盤の深い位置にある直腸がんや進行がんは難易度が高い。これらの手術では、施設によって成績(合併症率や死亡率)に差が大きいことを示す研究もある。

 それだけに、直腸がんや進行がんで腹腔鏡手術を受ける場合には、手術症例数が多く、難易度の高い手術の経験も豊富な病院で受けたほうがいい。逆に、腹腔鏡手術の経験数が少ない病院の場合は、無理をせず開腹手術を受けたほうがいいだろう。最近は開腹手術でも、小さな傷で手術できる工夫が進んでいる。

 直腸がんの場合、気になるのが「肛門を残せるか」だろう。かつて、腫瘍が肛門から近い場所にあると、肛門を残せないことが多かった。この場合、腸の切れ端をお腹から出して、便の排泄口をつくる必要がある。これを「人工肛門(ストーマ)」と呼ぶ。人工肛門になると、自然に便が出てくるので、それを受ける専用の袋を装着し、定期的に中身をトイレに流したり、袋を交換したりする必要がある。