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2000年頃から急増している前立腺がん――泌尿器がん手術の現在

2018/10/18
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ロボット手術も選択肢の一つ

 もちろん、中には悪性度が高く、放置していると命取りになる前立腺がんもあるので、とくに若い人では積極的な治療が必要だろう。だが、すべてがそうではないので、前立腺がんと診断されてもあわてず、まずは悪性度が高く、進行が早いものかどうかを医師にしっかり確認してほしい。

 悪性度が高くない場合は、定期的にPSA検査や針生検を行って、病状が悪化したと判断した場合に治療を検討する方法もある。これをPSA監視療法(待機療法)と呼ぶ。体に負担をかける過剰な治療を受けないためにも、こうした選択肢があることも、頭に入れておくべきだろう。

 がんが前立腺内にとどまる段階で根治をめざす治療を受ける場合には、前立腺を全摘する手術か放射線治療を選ぶことになる。手術は、従来の開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術やミニマム創内視鏡下手術があり、近年はロボット手術の選択肢も出てきた。

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©iStock.com

 お腹に数センチの穴を数ヵ所開け、細長い内視鏡カメラと手術器具を挿入し、モニターに映ったお腹の中を見ながら進める腹腔鏡手術は、術後の痛みが少なく回復が早いメリットがある。06年に保険適用となって以来、この手術を採用する病院が急速に増えた。

 ただ前立腺は骨盤の奥深い場所にあるため、胃がんや大腸がんの腹腔鏡手術よりも熟練が必要と言われている。したがって腹腔鏡手術を選択する場合には、この手術の経験が豊富な医師のもとで受けるようにしてほしい。

 これはロボット手術も同じだ。細長い手術器具を患者の体内に挿入するのは腹腔鏡手術と同じだが、操作は人の代わりにロボットアームが行う。術者は手術台から離れた操作ボックスに座り、立体画像を覗きながら指や足を使ってロボットアームを遠隔操作する。

 腹腔鏡手術に比べ、ロボット手術は器具を自由な角度で動かすことができるので、骨盤の奥深くにある前立腺の手術に適していると言われている。ただし、この操作を行うのにも、一定の訓練が必要だ。2012年4月に、前立腺がんに保険適用となって以来、ロボット手術を導入する病院が急速に増えたが、やはり経験豊富な医師のもとで受けたほうがいいだろう。

 前立腺がんの手術を受けると、後遺症が残る場合もある。代表的なのが排尿障害(尿失禁)と性機能障害(勃起不全)だ。こうした問題を避けるため、近年は放射線治療を選択する人も増えた。放射線治療には体内に埋め込んだ線源から放射線を当てる「組織内照射」と、体外から放射線を当てる「外照射」がある。