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2000年頃から急増している前立腺がん――泌尿器がん手術の現在

2018/10/18

副作用が少ないIMRT

 組織内照射で代表的なのが、放射線を発生する小さなカプセルを50~100個ほど前立腺の中に埋め込む「小線源治療」だ。原則的に悪性度の低い腫瘍に適応されるが、中・高リスクの腫瘍にも、外照射やホルモン療法と併用する治療が試みられている。

 外照射では近年、IMRT(強度変調放射線治療)という方法が普及している。これはコンピューターを使って多方向から、様々な強さの放射線を照射することで、腫瘍の形に合わせて放射線を精密に当てる方法だ。直腸や膀胱に放射線が当たると出血などの副作用が起こることがあるが、IMRTだと腫瘍以外には強い放射線が当たらないので、副作用が少ないとされている。

 IMRTは土日を除くほぼ毎日、30~40回に分けて照射を受けなければならない欠点がある。だが、小線源もIMRTも、手術と遜色ない成績が得られるとされている。そのため、近年は放射線治療を選択する患者も増えた。ただし、再発した場合は、放射線の影響で組織が固くなり、出血しやすくなるため、手術のリスクが高くなる。こうした治療のメリット・デメリットや、年齢、価値観なども考慮したうえで、自分に合った最適の治療を選んでほしい。

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 なお、腎がんは放射線が効きにくいので、転移がない場合は基本的に手術となる。4センチ以下の小さな腫瘍の場合は、部分的に切除することも可能だが、その条件に当てはまらなければ全摘手術となる。

 手術は通常の開腹手術のほかに、腹腔鏡手術も行われている。2016年4月からはロボット手術も保険適用となった。

©iStock.com

 膀胱がんは、腫瘍が粘膜または粘膜下層にとどまる早期の「筋層非浸潤性がん」か、筋層まで潜り込んでいる「筋層浸潤性がん」かによって、原則的に治療がことなる。早期の筋層非浸潤性がんの場合は、尿道から細長い内視鏡を挿入し、画像を見ながら腫瘍を切除する「TUR-Bt(経尿道的腫瘍切除術)」が基本だ。これに加え、膀胱内に抗がん剤を注入する治療が行われる。これによって膀胱を温存することが可能だ。

 だが、早期でも広範囲に広がっていたり、再発を繰り返したりする場合や、筋層浸潤性がんの場合は、膀胱全摘手術となる。膀胱を失うと尿を溜められなくなるので、尿管や小腸の1部を使ってお腹から尿を出し、専用の袋で受ける人工膀胱(ストーマ)にするか、小腸の一部で袋を作って、そこに尿を溜める代用膀胱を作ることになる。

 前立腺がんを多く治療している病院なら、腎がん、膀胱がんやその他の泌尿器系がんの治療経験も豊富なはずだ。したがって、前立腺がんの治療数を目安に、病院を選ぶといいだろう。

出典:文春ムック「有力医師が推薦する がん手術の名医107人」(2016年8月18日発売)

2000年頃から急増している前立腺がん――泌尿器がん手術の現在

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