内田 偶然の出会いが幾重にも重なっていたのは、会うことが叶わなかったお祖父様が孫の道筋を照らしてくれたのだと、私は思いたいです。
父方の祖母とは一時期同居していた
浅野 その後、『47RONIN』という赤穂浪士の映画の話をいただいたとき、僕は浅野なんだ、浅野家の血を継いでいるんだとさんざん説明したのに、吉良上野介の役だった。あれ? 先祖の助けがなくなったか?(笑)
内田 あとは自分で頑張れって(笑)。
浅野 僕も也哉子さんに聞きたかったんですよ。也哉子さんはあの自由奔放な裕也さんのお父様やお母様のことはご存じなんですか。
内田 父方の祖父は私が生まれる前に亡くなっています。祖母は兵庫県西宮の人で、体調を悪くしたので母が東京に呼び寄せて一緒に暮らした時期があったんです。そこに裕也はいないんですけど母と祖母はとても仲が良かった。祖母からは、裕也が子どもの頃にあまりに奔放だったのを心配して、当時でいう脳病院に連れて行ったことがあると聞きました。
父はギターを弾けないロッカー、祖父は稼がない琵琶奏者
浅野 希林さんのお父様、お母様とは?
内田 私が小学生のときに2人とも他界しました。祖父は警視庁の刑事だったんですよ。浅野さんはよく刑事の役をやりますよね。
浅野 ちょうどいま撮っている映画でも刑事をやっています。
内田 ドラマのような話ですが、祖父が祖母のカフェで張り込みをしているうちに、2人は恋に落ちたんです。本当は琵琶奏者になりたかったという祖父に、祖母は「私が稼ぐからあんたは好きなことをしなさい」と言ったので、祖父は刑事を辞めてしまいました。
というわけで、父はギターを弾けないロッカーでしたが、祖父は稼がない琵琶奏者。「也哉子、なんで琵琶は流行らないんだろうね。どうすれば琵琶はマイケル・ジャクソンに勝てるのかね」とこぼしていたのを覚えています。
浅野 お祖父様もお祖母様もサイコーのキャラですね(笑)。
●浅野さんのハリウッドでの活動、息子の音楽への思い、別の人との新たなパートナーシップ、無言館で思う戦争の「形」についてなど、対談の全文は『週刊文春WOMAN2024夏号』でお読みいただけます。
写真・平松市聖 協力・戦没画学生慰霊美術館 無言館
あさのただのぶ/1973年神奈川県生まれ。ドラマ『3年B組金八先生』(88)を経て、『バタアシ金魚』(90)でスクリーンデビュー。『モンゴル』(2007)が米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。『私の男』(14)でモスクワ国際映画祭最優秀男優賞受賞。カンヌ国際映画祭ある視点部門で『岸辺の旅』(15)が監督賞、『淵に立つ』(16)が審査員賞を受賞。ディズニープラス「スター」で配信中のドラマ『SHOGUN 将軍』が世界的なヒットになっている。
うちだややこ/1976年東京都生まれ。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。著書に『新装版ペーパームービー』『BROOCH』『9月1日 母からのバトン』『なんで家族を続けるの?』(中野信子との共著)など。Eテレ『no art, no life』では語りを担当。本誌連載をまとめた『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(文藝春秋)が現在9万部のベストセラーに。
【週刊文春WOMAN 目次】特集 なぜ今、1990年代ブーム?/野宮真貴×小室哲哉 あの頃の渋谷/香取慎吾 90年代を描く、語る/田嶋陽子 83歳のフェミニズム/佐藤愛子 ぼけていく私 第2弾!
2024夏号
2024年6月20日 発売
定価715円(税込)