現代の弁護士の「男女格差」
太田 『虎に翼』では、せっかく弁護士になったのに性別による偏見で依頼が来ず、寅子が苦しみます。
今も、依頼者や相手方から、「女性だから舐められてるんだろうな」と感じたというエピソードは女性弁護士の中では結構聞きます。また、「うちの事務所は女性弁護士は採用しない」と公言する事務所は私が弁護士になってからも普通にありました。今でも弁護士は男女間の所得格差は大きいですしね。たとえば、企業顧問を何件も抱えて安定経営といったやり方が成功しているのは、圧倒的に男性が多い。
最近聞いた話ですが、私よりずっと若い女性弁護士が、さらに年下の男性弁護士に「先輩はどうして弁護士になったんですか? 弁護士の奥さんになればよかったじゃないですか」と、言われたとか。男性弁護士はまずこんなこと言われないでしょうね。
佐藤 私たちは別に弁護士の奥さんになりたかったわけじゃないものね。企業顧問の話で言うと、「ボーイズクラブに入っているかどうか」は大きいんじゃないですか。地域のロータリークラブやライオンズクラブに入ると、付き合いは大変だろうけど、仕事の話も来るでしょう。
それに、仮説ですが、中高一貫の男子進学校出身だと、卒業後、同級生が社会的地位を得ていくから、仕事上の関係もできやすいんじゃないかな。
國本 そもそも人脈に男女格差がある、と。
佐藤 男性と女性の一般的な格差が、そのまま弁護士の収入にも跳ね返ってきていると思います。女性の経営者や資産家がもっといたら、女性弁護士の収入もアップしていくんじゃないでしょうか。
太田 あと、女性だと弁護士として見られないこともありますよね。これも、私より若い女性弁護士さんに聞いた話なんですが、チームとして仕事をする案件でクライアントにご挨拶に伺ったときに名刺交換をしようとしたら、スルーされたんですって。事務局の人に間違えられたんでしょうね。
弁護士は実力の世界だから、学歴も意識しないし、学閥も関係ない、会社組織で働くのとはまた違います。けれど、社会の慣習に阻まれないかというと、そうではない。弁護士業界だけで解決できるものではなく、もっと大きな社会全体の問題がありますね。