佐藤 それから、早稲田大学の石田京子先生の調査によれば既婚女性弁護士の配偶者の半数以上は法律家です。弁護士、裁判官、検事、あるいは研究者とかね。
太田 一般的に職場結婚や同業結婚は多いけれど、男性弁護士の配偶者は弁護士がトップではないですよね。
佐藤 女性弁護士の比率が20%とはいえ、女性弁護士が法律家でない男性に敬遠されるところはあると思います。私自身、「自分より収入の高い女性はちょっと」と男性に言われたことがありましたよ。
國本 『虎に翼』でも、帝大生がやってくると寅子の同級生男子が急にスンとする場面で男社会のヒエラルキーが描かれましたが、さらにそのヒエラルキーの上位に女性がいると、男性たちが「引く」ってことですよね。
「医学部における女性差別」を連想したシーン
佐藤 ドラマで司法試験の口述に久保田先輩(小林涼子)が落ちたとき、寅子たちに謝るじゃないですか。女性が一人しかいないと、女性代表になってしまうことが描かれた切ない場面でしたが、当時も口述試験では落ちるほうが少なかったようです。となると、「女性受験生はこの程度では合格させられない」といった差別的な目で見られていたのではないか、と、考えてしまう。
太田 佐藤さんが対策弁護団の中心メンバーのお一人である、「医学部入試における女性差別」を連想させますね。
佐藤 はい。私が担当した女子受験生はセンター入試を受けたんですが、自己採点では自分よりも低いはずの男性が受かって、自分は落ちていた。「マークミスしたんだろう」と言われ自分でもそうなのかと思っていたけれど、今回の事件によって、実は女性だから不利に扱われたのが不合格の理由だとわかった。
本当は女性だから排除されてきたのに自分の力不足を悔やんできた女性たち、久保田先輩のように自分を責めてきた女性は歴史の中に数限りなくいて、死屍累々の上に今があるんですよね。
※男性キャラクターたちの成長やドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』との共通点と違い、『虎に翼』での憲法の描き方がなぜ画期的なのか、作中で思わず涙が出てしまったセリフなどについて語った全文は、『週刊文春WOMAN 2024夏号』でお読みいただけます。
おおたけいこ/弁護士。2002年弁護士登録。離婚・相続等の家事事件、セクシュアルハラスメント・性被害、各種損害賠償請求等の民事事件を主に手掛ける。
さとうみちこ/弁護士、日本弁護士連合会男女共同参画推進本部事務局長。2002年弁護士登録。2013年、香川県丸亀市に田岡・佐藤法律事務所を開所。
くにもとよりのぶ/弁護士、社会福祉法人大阪あゆみ福祉会理事長。2002年弁護士登録。2024年、社会福祉法人法務支援クニモト法律事務所を開所。