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住宅街に突如現れる“怪異”とは…地元民しか知らない「ヤバい京都」教えます

住宅街に突如現れる“怪異”とは…地元民しか知らない「ヤバい京都」教えます

『怖いこわい京都』特別エッセイ#1

2024/07/10

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 社会, 読書

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妖しすぎるお気に入りスポット

 捨て墓地と並ぶ個人的なオキニをもう一ヵ所紹介しておこう。吉田山こと(神楽岡)にある〈竹中稲荷〉である。節分祭で有名な〈吉田神社〉が座す高さ100メートルほどの丘陵だが、この山頂北東寄りにあるお稲荷さんがわたしは大好き。奇しいものに反応するアンテナにゆんゆんきちゃう。

 
 

 鳥居と桜が交互に並んだ参道の眺めは吐息のもれる美しさだが、満開の頃でさえひっそりしているまさに穴場。たまさか迷い込んだようにやってきた人たちもお社に手を併せるとそそくさ帰ってゆく。なぜって、はっきりいって妖しすぎるので。

 

 信仰対象とは思えない半壊した社や、礎石だけがストーンサークルめいて残されたもの。神像が飾られた祠もあるが自然石を祀っただけのスタイルも混ざる。宝珠、石棺、埋め室、積み石。碑の台座には“何か”が出入りするための穴……。

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不安も恐怖の味のうち

「お塚信仰」という言葉をご存知なら、ああ、これがそうなのかと思うだろうけれど、その知識がなければほとんど異教の祭儀場に見える。ようは無秩序に祀られた私的なお稲荷さんの集合住宅だが、建て売り(笑)ではなく様式が不統一なので観ているうちに混乱してきて思考がバグっちゃうの。そのトリップ感がたまんないわけ。

 
 

 ここを訪れるたび、わたしは「ああ、こういう風景と出会うために京都をほっつき歩いているんだなあ」と感慨する。このたびそれらを紹介する機会を戴いて大変嬉しい。案内人がわたしでは不安かもしれないが、不安も恐怖の味のうち。かつて西山をめざした都人たちのように、怖楽しい、怖美しい玉虫色の京都へようこそ。

怖いこわい京都 (文春文庫)

怖いこわい京都 (文春文庫)

入江 敦彦

文藝春秋

2024年7月9日 発売

住宅街に突如現れる“怪異”とは…地元民しか知らない「ヤバい京都」教えます

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