文春オンライン

瀬戸内の“ナゾの人口5人の島”「小佐木島」には何がある?〈新幹線駅から約30分、船は1日3~4本…〉

中国地方“海の見える町”#2

2024/06/24
note

歩いているとやたらキレイな建物が。これは…

 そんな島の中で、違和感を感じるくらいキレイにリノベーションされた建物がいくつか建っている。そのひとつが、「宿NAVELの学校」という宿泊施設だ。

©鼠入昌史

 北海道に拠点を置く建築家・鈴木敏司さんが古民家をリノベーション、2018年から宿泊施設として運営しているのだとか。鈴木さん、どうして小佐木島でこんなことをしているのだろうか。

「実は子どもの頃に三原に住んでいまして、海水浴で小佐木島によく行っていたんです。本土側の海はどうしても汚くて、海水浴となったら小佐木島。歳をとって、これからは世のため人のためになることをしたいなと思っていたときに、その思い出がよみがえってきた。

ADVERTISEMENT

 訪れてみると、これがまあ良かったんです。島の人が温かくて、すぐに心を開いてくれて、『こっちに来いよ』って言ってくれた。それで、本当に来ちゃったんです。たくさん声をかけても、本当に来たのは私くらいだったみたいですけど(笑)」(鈴木さん)

鈴木敏司さん ©JR西日本プロパティーズ

 そうして古民家をリノベして、「宿NAVELの学校」の運営をはじめた。ちなみに、この島に就航しているのは人が乗るだけの高速船で、リノベのための資材を運ぶことはできない。

 そのため、鈴木さんは6回も船をチャーターしたのだとか。集落の真ん中に「宿NAVELの学校」、さらに少し離れたところにはサウナも設けた。かつてみかん畑だった場所に生い茂る竹を燃料にした、低温のサウナだ。

©鼠入昌史

「子どもでも入ってもらえると思うんですよね。目の前には瀬戸内海が広がっていて、ほんとうに最高ですよ。サウナを出たらそのまま海にザブン……とは、私の立場では言えませんが(笑)。ここで何もしない時間を過ごす。その価値は、計り知れないものがあると思いますよ」(鈴木さん)

©鼠入昌史
©JR西日本プロパティーズ
©JR西日本プロパティーズ

 そして、この「宿NAVELの学校」を核とした交流の取り組みもはじまっている。たとえば、5月のとある週末。広島市内の新築マンションの購入予定ファミリーが島を訪れ、鈴木さんのガイドで散策したり、竹の伐採をしたり。そしてサウナや食事も楽しんだ。ごく小さな規模のイベントながら、島の人々との交流もできたようだ。