“海の向こう”との関係で浮かび上がる「瀬戸内の島」

©鼠入昌史

 小佐木島の波止場に立って、海を見る。向こう側には小佐木島の数倍はある佐木島が浮かぶ。小佐木島の子どもたちは、船で佐木島の小学校に通っていたという。そして、中学・高校と進学すると本土の学校へ。毎日船で通うのが大変だとなれば、少しずつ島から去ってしまい、住民が減っていった。

 観光客が大挙してやってくるような島ではない。何があるのか、と問われれば、何もない。でも、そこに価値がある。こうした島が紡いできた歴史と文化を守り、つないでゆく。すぐに結果は出なくても、地道な一歩を刻んでいくことが大切なのだろう。少なくとも、小佐木島にはそれだけの魅力がある。遠く、都会に暮らす人たちが「瀬戸内の島」と言われてイメージするままの小さな島である。

◆◆◆

「文春オンライン」スタートから続く人気鉄道・紀行連載がいよいよ書籍化!

 250駅以上訪ねてきた著者の「いま絶対に読みたい30駅」には何がある? 名前はよく聞くけれど、降りたことはない通勤電車の終着駅。どの駅も小1時間ほど歩いていれば、「埋もれていた日本の150年」がそれぞれの角度で見えてくる——。

 定期代+数百円の小旅行が詰まった、“つい乗り過ごしたくなる”1冊。

ナゾの終着駅 (文春新書)

鼠入 昌史
文藝春秋
2025年3月19日 発売

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。