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シュワルツェネッガー主演は想定外だった…低予算映画『ターミネーター』大ヒットの意外な背景 町山智浩『〈映画の見方〉がわかる本』より

source : 提携メディア

genre : エンタメ, 映画

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「まだ、ジムを愛しているから」

『ランボー2』と『エイリアン2』の共通点

ランボー/怒りの脱出』(85年)と『エイリアン2』(86年)は非常によく似ている。『〜怒りの脱出』は、前作で警官隊や州兵とたった一人で戦って生き延びたランボー(シルヴェスター・スタローン)が、ヴェトナムに今も残されている米軍捕虜を救出する作戦に無理やり参加させられる。

『エイリアン2』は、前作でエイリアンとの死闘の末、たった一人で生き延びたリプリー(シガーニー・ウィーヴァー)が、エイリアンに襲われた植民惑星に残された人々を救出する作戦に無理やり参加させられる。

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ランボーは協力者のヴェトナム人女性を愛し、彼女が殺されたことで戦いの目的を得る。リプリーは生存者の少女を発見し、彼女を守るためにエイリアンと徹底的に戦う。また、主人公に任務を与えた軍が、最初から主人公を利用しようとしていたという展開も同じだ。

監督がシュワルツェネッガーを嫌がった理由

こんなに似ているのはたんに同時期に書かれたからだけではないだろう。主人公が「大切な人を救うために命を捨てて死地に戻っていく」という物語の根幹は、『ターミネーター』にも共通するし、『アビス』(89年)や『タイタニック』のクライマックスにもなっている。キャメロンは、このプロットにとりつかれているようだ。『ターミネーター2』では「I’ll be back !(戻ってくるぜ!)」がシュワルツェネッガーの決めゼリフになった。

『エイリアン2』は後に自分で監督することになるが、キャメロンは『〜怒りの脱出』の監督の依頼は断った。主演のスタローンと会ったとき、『ロッキー』(76年)のシナリオも自分で書いたスタローンが自分にリライトさせろと言って、脚本を持っていってしまったからだ。原型を残さないほど書き換えられて極端に右翼的な内容になった『〜怒りの脱出』を、キャメロンは自分の作品ではないと言っている。