これはレーガンが提唱したスター・ウォーズ計画(人工衛星からのビーム砲でICBMを迎撃する)によく似ている。ところが「スカイネット」は自ら核戦争を起こしてしまう。人間社会が崩壊した後、スカイネットに率いられた機械たちが地球を支配し、人類を奴隷にした。
『猿の惑星』の「猿」を「機械」に置き換えた話のようだが、『地球爆破作戦』(70年)という映画にもよく似ている(原作D・F・ジョーンズ)。
アメリカ政府はNORADのあるロッキー山脈の地下に、防空システムを統括する巨大コンピュータ「コロッサス」を設置する。ところがソ連も同様のコンピュータ「ガーディアン」を開発。二つのコンピュータは戦争を防ぐための話し合いをしたいと人間に要求する。言われたとおり回線を繫ぐと、二つのコンピュータは結託して核ミサイルで人類を脅迫した。核で滅びるか、このままコンピュータに服従して世界平和を実現するか……。
「人類を終結させる者」ターミネーター
『ターミネーター』の世界では、奴隷になった人類が機械に反乱を起こす。レジスタンスのリーダーの名はジョン・コナー。コナーは地下に潜り、ゲリラ戦で敵を翻弄(ほんろう)する。機械軍はコナーに関する情報を集めたが、母親の名前がサラだという程度しかわからなかった。コナーは織田信長に抵抗した雑賀衆の謎の頭目、孫市のようなものだ。
そこで機械軍はゲリラ側に潜入できる人間そっくりのロボットを開発した。それがターミネーター(人類を終結させる者)だ。ターミネーターの体は人間と同じ皮膚で覆われ、外見では人間と見分けがつかない。ただ、犬だけは人間と機械を嗅ぎ分けることができた。
しかし、ターミネーターでも機械軍はコナーに近づけなかった。そこでタイムマシンでターミネーターを過去に送った。コナーが生まれる前に母親を始末するのだ。これを知ったコナーも決死隊を過去に送った。自分の母を守るために。
キャメロンの最初のアイデアでは決死隊は二人で、「生まれて来なかった男」同様、タイムワープ時の事故で一人が死亡する。このような決死隊は実際の戦史にヒントを得たのだろう。たとえばドイツに占領された母国チェコに敵中降下し、「死刑執行人」と呼ばれたナチスの残虐なハイドリッヒ長官を暗殺し、玉砕したヤン・クビシュたちの戦いは『暁の7人』(75年)として映画化されている。