たとえば、新宿区の新宿駅、豊島区の池袋駅、台東区の上野駅のようなターミナルが、世田谷にはない。それどころか、世田谷区にはJRの路線がひとつも走っていない。
いったい、この90万都市の中心はどこなのだろうか。ただひたすらに、住宅地ばかりなのだろうか。そう思いながら地図を眺めていたら、名前もそのままの「世田谷」という駅があった。東急世田谷線の世田谷駅だ。
世田谷区の世田谷線の世田谷駅。ついでにいうと、世田谷区役所も世田谷駅からそう遠くない場所にある。となれば、世田谷区の本質的な中心は、世田谷駅周辺にあるのではないか。
三軒茶屋から住宅を抜けて7分。駅のホームに降り立つと…
そんなわけで、三軒茶屋駅から東急世田谷線に乗った。世田谷線は全線で世田谷区内を走る、文字通りの世田谷の電車だ。
路面電車のような風合いを持つが、道路上を走るいわゆる“併用軌道”の区間は持たない。線路のすぐ脇には住宅や商店がひしめくような、いかにも世田谷らしい町並みの中を抜け、三軒茶屋駅から7分ほどで世田谷駅に着いた。
見た目には路面電車と変わらないような小さな電車の駅だから、世田谷駅も区の名前を持っているといっても小さなものだ。向かい合う相対式の細いホームが2面あり、駅の脇には踏切がある。すぐ南側にはお寺の境内があって、その脇を歩くとすぐに世田谷通り。人通りもクルマ通りもなかなかに多い、この一帯のメインストリートだ。
さらに、世田谷通りから少し南に入ると、そこには「ボロ市通り」と名乗る道。世田谷通りほどではないけれど、こちらも充分に道幅は広く、通り沿いには商店が連なっている。
その名の通り、毎年12月と1月にボロ市が2日間ずつ開かれ、1日の人出は約20万人という世田谷屈指のビッグイベントの会場でもある。普段からもそれなりに賑やかで、ボロ市通りを散策している外国人観光客の姿もあった。