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手塚 小中さんも知っている通り、この映研はみんなで脚本を出し合うんですね。それをお互いが読んで、意見を交わして、一番みんなが望むものを一つ選んで作る。

―― 非常に民主的というか、合議制で決めていく。

手塚 そうですね。高校のクラブ活動ですから、大学の映研とはちょっと違うのかなと思いますけど。

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―― 1年生の僕らも投票して手塚さんの『FANTASTIC★PARTY』に決まりました。

手塚 1年生の意見もちゃんと聞いて、それで納得できる意見は全部取り入れて作るという感じですね。

―― 「ヒマヒマクラブ」というサークルの少年たちと、マドンナ、吸血鬼を自称する青年、自殺癖の少女などが巻き起こす騒動を描いた物語でした。僕が覚えているのは、幽霊のキャラクターが変わったことです。

手塚 そうなんです。途中で幽霊が出てきて、実は幽霊じゃなくて妖精だったという話になっています。でも元の脚本では最後まで幽霊なんです。けれど、同じ話の中で自殺願望のある女の子が出てきてそれをみんなで止めようとしているのに、幽霊が現れると辻褄が合わないんじゃないかという意見があって。

―― 「死んじゃいけない」という話をやっているのに、死んだらかわいい幽霊になれるなら説得力がない、みたいな意見でしたね。そういう議論をしながら作る映研でした。

手塚 僕は良し悪しだと思いましたけどね。高校生なんだから、もっと自由に作りたいようにやっていいんじゃないかと。ただ、多くの人が集まってみんなで意見を言い合って作る共同作業は学べることがあるかなとは思いました。

全カットの絵コンテを描いた1冊だけのノート

―― 映研の中でキャスティングされましたが、イメージ通りでしたか?

手塚 役に1人ずつ当てはめていくと、1人どうしても足りなかった。それで同期の人たちが「手塚、お前、自分でやれよ」という話になったんです。僕は監督に専念したかったけれど。

―― ちょっと理屈っぽくてひねくれたキャラクターだけど、手塚さんがやってかわいらしくなったと思いました。

手塚 同じことがその後もう一回あって。僕が初めて商業映画に俳優として出演した『ねらわれた学園』という大林宣彦監督の映画です。台本が送られてきて読んだら、同じようにガリ勉でちょっと嫌な役なんですよ。こちらは敵役で、本当に嫌なやつなんですね。どうしようかなと思って、映画仲間に相談したんです。そうしたら「これは普通の俳優がやると本当に嫌な役になっちゃうけど、手塚がやると愛される感じになるからやったほうがいい」と言われたんですよね。