―― 完成した作品を見て、どう感じましたか?
手塚 やっぱり1本目なので、全然思ったようにいかなくて。好きなシーンもあるんですけど、トータルとしてやっぱりぎこちないし、人に見せたくないな、ぐらいに思ってました。
―― でも文化祭で上映して、大きな反響がありました。
手塚 2日間で6回上映したんですけれど、最初はそんなにたくさん来なくて、知り合いが見に来たんですね。だけども、笑わせるところでは笑っているし、脅かすところには驚いているし、終わった後、みんながワーッと拍手してくれたんです。思っている以上にいい反応だったので嬉しくなったんですけど、2回目、3回目と回を重ねるごとにお客が増えていく。
2日間で倍々ぐらいに増えていって、最終回の上映は入りきらなかったんですね。外まで長蛇の列で先生とかも並んでいるんです。「先生、どうしたんですか?」と言ったら、「これが面白いと聞いたので見に来たんだけど」とか言われて。ビックリしたと同時に、ちょっと自信がつきましたね。
これで学んだのは、お客さんはまた別の視点で見ているし、自分で駄目だと思っても、それがイコールその映画が駄目ということじゃないなということ。それ以来、映画って見せないと完成しないと思うようになった。最初の1本でいろんな思いができてよかったと思います。
注1 寺田敏雄(脚本家)代表作:テレビシリーズ「交渉人」「ドクターX~外科医・大門未知子~」 映画『グッバイ・ママ』
注2 利重剛 映画監督、俳優。成蹊高校映画研究部で小中と同期。『教訓Ⅰ』(1980)でPFF入選。代表作:『BeRLiN』『クロエ』『さよならドビュッシー』
<聞き手>こなか かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画製作を経て、1986年『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。
1997年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。
主な監督作品に、『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ULTRAMAN』(2004)、『東京少女』(2008)、『VAMP』 (2019)、『Single8』 (2022)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023)など。