日大芸術学部在籍時の19歳で撮った8ミリ作品『MOMENT』は自主映画界に旋風を巻き起こした。日本映画界の「青春時代」を描くインタビューシリーズ第3弾。(全4回の3回目/#1、#2、#4を読む)
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8ミリ作品の決定版『MOMENT』
手塚 『MOMENT』は、最後が結構残酷に終わるんですよ。それを見て意外だと思った人は多かった。
―― 前半は、とてもかわいくてポップな映画で、それを楽しんで見ていると、後半すごい展開になります。
ポッキーは元気な女の子。的中率100パーセントの占いのおじさんのおかげでテストは合格点。お財布は拾うし、ステキな男の子は見つかる、と大ラッキー。でも肝心の今後の占いは、あたしが死ぬって? ――『MOMENT』DVDより
手塚 クライマックスが非常に残酷で。みんな死んでしまう。さすがにうちの父親も脚本を読んで、最後に全員死んじゃうのはどうかと言って、誰か残すことはできないかとか、いろいろ心配してくれてましたね。
―― 手塚治虫さんこそそういう人ですけど(笑)。
手塚 僕もそう思ったんです。「あなたの漫画だってそうじゃないですか」って言いたかったけど。『FANTASTIC★PARTY』が本当にほんわかした、希望とか夢を感じさせる映画だったので、逆にその希望とか夢を全部断ち切ったような『MOMENT』のラストシーンというのは、大島渚監督も驚かれたみたいで。ただ、大島監督は「意外だったけど、逆にもっと作品を見たくなった」といたずらに否定はしなかったです。
―― 手塚さんはそれこそがやりたいことだったんですね。
手塚 ひっくり返すというか、裏返すことをやりたかった。それも本気で裏返す。楽しさの頂点からいきなり不幸のどん底に突き落とされる感覚というのをやってみたかったんです。
―― 途中、手塚さん自身が監督役でも出て進行している映画にカットをかけたり、メタ的というか、映画であることにすごく自覚的な演出ですね。
手塚 ある種の楽しさとか、無為なエンターテインメントのピークみたいなものが途中にあって、最後が全く真逆で本当に地獄のような場面で終わるという構造です。ちょうど真ん中でそれがブツッと切れてそうなっていっている。
―― その橋渡し的なシークエンスでもあったんですね。