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パリオリンピックの真実

カミソリの刃が送られてきたことも…〈14歳で金メダル〉競泳・岩崎恭子が五輪後に抱えていた“葛藤”「この話をするのは4年に1回でいいかな(笑)」

カミソリの刃が送られてきたことも…〈14歳で金メダル〉競泳・岩崎恭子が五輪後に抱えていた“葛藤”「この話をするのは4年に1回でいいかな(笑)」

岩崎恭子さんインタビュー #1

14時間前
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冷静に振り返ったいい発言はメディアには使われない

――パリ五輪でも、試合直後の選手の言葉に注目ですね。

岩崎 ぜひ、耳を傾けてみてください。選手の個性がモロに出ると思います。実はメダリストは、試合直後だけでなく、ミックスゾーンや公式記者会見、表彰式の後にもインタビューされる機会が設けられていて、その場ではみな、冷静に試合を振り返りいいこと言っているんですよ。でも、いい発言はメディアには使われない(笑)。

 一見、競泳選手ばかりが名言を吐くように思われがちですが、それはいつインタビューを受けるかの違い。他の競技でも、試合直後にマイクを向けられる選手の言葉には“素”が出て、なかなか興味深いです。

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©深野未季/文藝春秋

試合前におにぎりを5個も食べた

――岩崎さんはなぜ、マイクを向けられた瞬間にあの言葉が出たんでしょう。

岩崎 私は3人姉妹の次女で、姉が水泳をやっていたので私も始めたんです。オリンピック選手になろうなんてさらさら思っていなかったけど、小6の時に小学生の部で優勝。そこから平泳ぎでタイムを縮めるのが面白くなり、中2の時に代表選考会で2位になり、バルセロナ五輪メンバーに選ばれました。

 でも、当時の私の記録は、世界トップ選手のアニタ・ノール(米国)とは6秒近くも差があったので、誰にも注目されず、期待もされていなかった。だから、代表合宿では五輪のプレッシャーもなく無邪気に過ごしていたし、私のその時の目標は決勝進出でした。

 そんな状況だったので、予選で2位になり決勝進出を決めたときは「やったー!」ってガッツポーズ。予選で自己記録を3秒30も縮め、代表の先輩たちからも「恭子ちゃん、凄いね」と言われ、達成感いっぱいでした。

 コーチから「もう一回泳ぐんだからね」と言われましたけど、五輪の決勝戦はどんなプレッシャーがかかるのかも理解できず、試合前におにぎりを5個も食べていましたから。

表彰台で涙を拭く岩崎さん ©時事通信社

――決勝前におにぎり5個ですか!

岩崎 はい(笑)。他の人が残したものも貰いました。状況を呑み込めていなかったのが良かったのか、会場に入ると、50mプールが小さく見えたんですよね。そして無心で泳いだら、なんと五輪新記録で私が金メダル。咄嗟に口に出たのがあの言葉でしたが、それには訳がありまして……。

 私は全く注目されない選手でしたけど、自分の中では泳ぐたびにタイムを縮められる感覚があり、中一の時に1年間で3秒ぐらいタイムを上げたんです。そして五輪に入ってからも短期間にタイムを縮められたので、1年前と同じだなという思いが自分の中ではあった。でも、金メダルを獲ったからあの時以上と考え、今まで生きてきた中で、という言葉が出ちゃったんですよ。

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