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パリオリンピックの真実

「彼女はやっぱりトップアスリート」池江璃花子(24)がパリ五輪までに“変えたこと”〈競泳・岩崎恭子が注目選手を解説〉

「彼女はやっぱりトップアスリート」池江璃花子(24)がパリ五輪までに“変えたこと”〈競泳・岩崎恭子が注目選手を解説〉

岩崎恭子さんインタビュー #3

12時間前
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 7月27日から、パリ五輪の競泳がスタートする。日本からは男子14人、女子13人の代表選手が出場予定だ。バルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子さんに、選手の強みや今大会の見どころを聞いた。(全3回の3回目/はじめから読む

パリ五輪代表内定を決めた瞬間の池江璃花子選手 ©文藝春秋

◆ ◆ ◆

池江璃花子選手が掲げた目標は「決勝進出」

――過大な期待は選手にプレッシャーをかけてしまうと分かっていても、白血病から回復し、100mバタフライに出場する池江璃花子選手にはどうしても注目が集まってしまいます。

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岩崎恭子さん(以下、岩崎) 注目するのはいいと思いますが、ただ現実を見ると彼女の今の自己ベストはトップから1秒以上遅い。100mでの1秒差はかなり高いハードルです。池江選手も「パリ五輪の目標は決勝進出」と言っているし、目標を達成したら快挙だと思います。

 免疫系の病気から個人種目で五輪に出場するのは、並大抵のことではありません。強靭な精神力がないと、まずトップアスリートとしての体は作れないし、ましてや五輪の出場なんて……。

 それだけでも大変なことなのに、池江選手は病気以前の泳ぎが忘れられず、苦しんでいる気がします。以前会った時も「やっぱり病気をしなかったらどうだったんだろうと考えてしまうことがある」と語っていましたから。

練習拠点をオーストラリアに移したことがプラスになった

――応援する側としては、重篤な病気を克服し、五輪という舞台に立つその事実だけでも、メダルや記録以上のものを汲み取ってしまいそうですが。

岩崎 ただ、彼女はやっぱりトップアスリートなんですよ。記録を出せなければ納得しないと思います。でも、どこまで自分を追い込めるのか、追い込んでいいものなのか、常に自分と闘ってきたはずです。それでも昨年秋に練習拠点をオーストラリアに移したことがプラスになったと思いますね。

池江璃花子選手 ©文藝春秋

 世界記録保持者やメダリストたちと一緒に練習することで、かなり刺激を受けたんじゃないでしょうか。世界のトップアスリートに囲まれ、焦ることなく、薄紙一枚一枚を丁寧に重ね合わせるようにして体と技を磨き上げたからこそ、個人種目でパリの切符を掴めたのでしょうね。

 中学や高校の時はかわいらしい選手というイメージだったけど、18歳で出場したアジア大会で、6種目優勝。その時に、世界に誇れる選手になると確信しました。事実、100mバタフライで世界ランキング1位になったこともありましたし。

 だから今、体を回復させても18歳の時の感覚が戻ってこない自分に多少のいら立ちはあると思います。でも、そこは本人にしか分からないことなのでアドバイスはできないけれど、池江選手は必ず前に進み続けると思います。パリ五輪以降も競技人生は続きますから。

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