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 この頃の韓国での日本文化の位置づけは「アンダーグランド文化」だったと言えるだろう。正規にリリースされていない楽曲が流行っていて、たとえば松田聖子と同世代のアーティストを考えると、近藤真彦の歌う「ギンギラギンにさりげなく」の認知度はかなり高い。

 筆者が韓国の50代以上とカラオケに行く際にはこの曲はテッパンで、ほぼ100%の確率で「知っている!」と喜ばれる。しかし「誰が歌っているか=近藤真彦」まで知られていない。なぜなら、当時の主要媒体は闇流通のカセットテープで、楽曲以外の情報は伝わらなかったのだ。

 それが2024年の今、松田聖子は韓国で「発見された」。

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1987年、25歳当時の松田聖子 ©時事通信社

韓国で起きた“ブーム”が追い風に

「ハニのステージからは、心地よい懐かしさが伝わってきます。それは80年代当時を知る40代以上だけでなく、10~20代をも刺激している。若者たちは、新鮮な気持ちで松田聖子という歌手、そして『青い珊瑚礁』を楽しんでいます」(前出の韓国スポーツ紙元デスク)

 若い世代も新鮮な気持ちで松田聖子の歌を聴く。その背景には、前述した韓国で2018年頃から始まる「ニュートロ(Newtro)」ブームがある。これは、ニュー(New)と“レトロ(Retro)”を組み合わせた造語で、80~90年代頃の要素を再編集して最新のスタイルに落とし込むというものだ。当時を知る世代にとっては懐かしく、若い世代は新鮮に楽しむ。そうした観点から幅広い層に共感を得られるものとして定着した。

 今回の松田聖子・青い珊瑚礁ブームでは、まさに韓国の「ニュートロ」の特徴が現れている。