パリ五輪開催直前の世界ランキングで“過去最高”の2位まで浮上し、52年ぶりのメダル獲得が期待される男子バレー。日本代表がこれほど強くなった理由とは、一体何なのか。前代表監督の中垣内祐一さんに、自ら招聘し後を託したフィリップ・ブランとの秘話やチームの歩みについて聞いた。(全3回の1本目/つづきを読む

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世界一のバレー技術だと断言できる

――パリ五輪では男子バレーが注目されています。世界は大型化、パワー化が進み、日本は50年以上もメダルから見放されてきました。つい最近までメダルは夢物語と思っていたのに、それが今や金メダルの可能性もある。なぜこれほど急に成長したんでしょうか。

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中垣内祐一さん(以下、中垣内) 僕が代表監督に就任した2017年から、今後さらに強くなることは想定していましたが、ここまでとは思いませんでした。2021年の東京五輪ではバルセロナ五輪以来のベスト8でしたけど、あくまで成長過程。今のチームのピークは、パリ五輪ではありません。多分、(2028年開催予定の)ロス五輪くらいになるのではないでしょうか。パリ以降も日本代表はまだまだ伸びていきますよ。

 バレー技術に限って言えば、パリ五輪現在、世界一と断言できます。ただ世界の強豪国は高さに加えパワー、技の巧みさもある。それらのビハインドを日本の技術力、組織力、スピード、精密さでどう埋めていくか。高さやパワーには限界があるけど、技術の追求はエンドレス。日本によりアドバンテージがあります。

強烈なハングリー精神に蓋をしたくなかった

――でも、中垣内さんが代表監督に就任された2010年代後半、日本は世界ランキング15位前後を推移していました。どんなチーム作りをして急速に進化させたんですか。

日本代表監督時代の中垣内さん ©時事通信社

中垣内 石川(祐希)をはじめとする今の選手たちは、勝ちたい、上手くなりたい、世界一になりたい、というハングリー精神が半端ない。日常のほとんどをバレーのために費やしていると言っていい。これはバレーが上手くなるために必要か、そうでないかという線引きが明確なんです。言うなら、バレー以外にはあまり興味がない。

 僕らの選手時代は邪念だらけでしたよ(笑)。試合が終わったら釣りに行きたい、飲みに行きたい、デートしたいとか……。試合や練習で円陣を組むと酒臭い選手がいたり。そんな反省もあり、今の選手らの上手くなりたいという強烈なハングリー精神に蓋をせず、成長させる環境作りをしたいと考えたんです。

――そもそも、なぜ東京五輪の時、代表監督に立候補したんですか。