「そんなバレーじゃ世界に勝てない」初日からぶつかった2人
中垣内 いやいや、合流初日からぶつかっていましたよ。日本の男子バレーは、相手側のサーブをレシーブしてから得点するサイドアウト率を上げることに懸命になってきた。でも、なかなか成功しない。
だから僕は逆の発想で、サーブする側がラリーを制するブレイク率を高めれば、相手のサイドアウト率を自ずと下げられると読んだ。そのためにはサーブが重要だと考えたんです。ところがフィリップは「そんなバレーじゃ世界に勝てない」と即刻却下。
今でこそ、フィリップもサーブの重要性を分かっていますが、彼が考えを改めたのは僕のストラテジーを受け入れたのではなく、西田(有志)が代表入りし、彼のサーブを見てから(笑)。
選手の起用や指導法でもかなりぶつかりましたね。負傷した選手を出場させようとして止めたこともあるし、「大学生はなぜ勉強するんだ、練習ができないじゃないか」と怒ったり。学生だから勉強するのは当たり前なんですけど。
とにかく頑固で人の言うことを聞かない。一旦決めたらわき目も振らず実行するブルドーザーみたいな人です。
胃に穴が開き、睡眠薬も欠かせなかったフィリップとの5年間
――よくそういう人と4年間も。
中垣内 胃に穴が開いたし、睡眠薬も欠かせなくなりました(笑)。
でも、日本代表を強くするのは彼しかいないと考え招聘したので、彼の意見を尊重するのは当たり前。最初の頃は彼の思考パターンが分からず苦戦しましたけど、どういう風に立ち回れば彼が納得するのかは覚えましたね。彼はアシスタントコーチだけど実質的な監督になってもらい、僕は総監督的な立場になり一歩下がれば、物事がスムーズに進むと分かった。
結局、僕のプラン通りになったことが何度かありましたけど、彼には「だから言ったでしょ」とは口が裂けても言わない。彼のプライドを傷つけてしまいかねないので。ほかの人には言ったかもしれないけど(笑)。