「何気なくテレビを見ていると…」代表監督に立候補した理由
中垣内 その頃は新日鐵住金(当時)の会社員で、営業を担当していました。何気なくテレビで2015年のW杯を見ていると、石川や柳田(将洋)など、ハイセット(2段トス)から巧みにスパイクを決める選手がいて驚いた。すごい選手が出てきたと思ったけど、彼らの才能をさらに引き出すには「日本人コーチでは無理」と考えたんです。
それまでの代表監督やコーチは、元選手が就任していた。だけど現役時代に実力があっても、コーチには別の能力が必要とされる。そう強く思ったのは、2009年から2年間、日本オリンピック委員会スポーツ指導者海外研修事業で、米国やブラジル、欧州などの指導現場を見てきたからでした。
海外のコーチはみなプロ。成績を出せなければ即刻クビ。だから指導者はめちゃくちゃ勉強します。勝つためにいいやり方だと判断すれば即座に取り入れるし、戦術・戦略の思考も深く、情報は常にアップデート。選手やスタッフを私情なしで入れ替える。組織に忖度することもありません。
一方の日本は企業スポーツなので、引退すれば社業に戻る。バレーに賭ける覚悟が全然違います。ただ、東京五輪の監督候補は日本人限定という縛りがあったため、僕が立候補し、アシスタントコーチに外国人を呼ぶプランを提案し、採用されました。
弱小チームを強豪に育て上げたフィリップ・ブランの実績
コーチ候補は2~3人いたけど、日本人選手を成長させられるのはフランス人のフィリップ・ブランしかいないと思っていました。彼はそれまで弱小チームだったフランス代表を強豪に育て上げたし、ポーランド代表も強くした。何より守備の指導に定評があり、日本が得意なディフェンスをさらに磨き上げてくれるという確信がありました。
――二人三脚はすんなりいきましたか。