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「胃に穴が開いて、睡眠薬も欠かせなかった」「そんなんじゃ世界に勝てない、と…」バレー男子日本代表が“最も強くなるタイミング”とは《中垣内祐一が解説》

「胃に穴が開いて、睡眠薬も欠かせなかった」「そんなんじゃ世界に勝てない、と…」バレー男子日本代表が“最も強くなるタイミング”とは《中垣内祐一が解説》

中垣内祐一さんインタビュー #1

7時間前
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中垣内 とにかくフィリップは優秀です。判断が速いし、物事が重層的に見えているのか、試合や練習で選手に対する指示が瞬時で正確。特にコート内でのポジショニングに関しては秀逸でした。

 レシーブやブロック、飛ぶ位置、入る位置を徹底して決めて、ちょっとでもずれようものなら「そのポジションじゃない!」って。びっくりするぐらい緻密な一方で、試合展開によっていかようにも変える。その速さと正確さこそがまさにフィリップの武器であり、日本代表の強みになっています。

 いうなら彼は間違いなく三ツ星レストランのシェフ。素材を最高に生かすのが上手いんですよ。

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現在は福井工業大学で教授を務めながら、米農家にも励む中垣内さん(大学提供)

「よくぞ引っ張ってくれた」長身メンバーの“過去”は…

――それでも、素材が良くなければどんな名シェフでも腕の振るいようがない。素材を育て集めてきたのは中垣内さんですよね。

中垣内 それを言うなら、まずは彼らの両親や中・高校の指導者に感謝したいですね。ミドルブロッカーの山内晶大、小野寺太志、高橋健太郎はいずれも身長が2mを超えていますが、彼らは中学まで野球やバスケットをしていたんです。それを当時の指導者がよくぞバレーに引っ張ってくれたなって。

(左から)ともに2m超えの長身をもつ山内晶大と小野寺太志 ©時事通信社

 ただ、伸びそうだなという選手には、アンダーカテゴリーにいた頃から、日本代表の経験を積ませました。西田、髙橋藍、宮浦健人などがそう。周りから反対されましたけど、鉄は熱いうちに打て、ですよ。

石川、西田、髙橋…海外での経験を積んだ中心メンバーの強さ

 海外移籍の後押しもしましたね。僕らの時代は世界が遠くて、試合する前から「ダメかな」と引いてしまうこともあった。しかし海外でプレーすれば目線が変わる。高いレベルの中で自分の能力を伸ばすことはもちろんのこと、強い選手と日常的に触れ合うことによって、「彼らも自分とあまり変わらない」と思うんですよね。これが大事。

(左から)イタリア1部リーグ・セリエAで活躍する髙橋藍 ©時事通信社

 一緒に食事したり飲みに行ったりしながら、バレーへの取り組み方とか技術の磨き方なども学べるし、自分たちと違う存在だとは思わなくなるんですよ。だから代表戦の時にコートで向き合っても互角に張り合える。

 石川、西田、髙橋藍、宮浦、セッターの関田誠大ら代表の中心メンバーは海外を経験しています。だから強いんですよ。

「胃に穴が開いて、睡眠薬も欠かせなかった」「そんなんじゃ世界に勝てない、と…」バレー男子日本代表が“最も強くなるタイミング”とは《中垣内祐一が解説》

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