「千里浜なぎさドライブウェイを走ったら、次は羽咋(はくい)の市内に足を延ばしてみませんか」
地震で被災したあとの能登観光。金沢駅の観光案内所で勧められた通りに車で向かう。ドライブウェイの南端で浜茶屋の苦境を聞いた(#1)あとは、北端の石川県羽咋市だ。
まずは、JR七尾線の羽咋駅を訪れた。
「ジャーン!」「ズズズズズズー」
「ジャーン!」
「羽咋駅に見参したぞ」という効果音で書いたわけではない。そう彫刻された石が駅前に鎮座しているのだ。
看板には「壇上に立ち、あなたにとって何が『ジャーン』なのかをこころに唱えながら撮影してください」とある。
高さが1mほどあるので、気をつけて登らないといけないが、観光客は「ジャーン!」という彫刻の上に立って写真を撮るのが定番になっているのだろうか。
近くには「ズズズズズズー」という文字の彫刻もあった。
「いったい、これは何を意味しているのか」
駅前で客待ちをしていた50代のタクシー運転手に聞いてみた。
「何だろうね。私も不思議に思っているんですよ。スマートホンで市のHPを見てみましょうか」と親切に調べ始める。能登の人は気がいい。
「また集まって来てくださいね」という意味合いを込め
乗車もしないのに申し訳ないので、市役所の商工観光課に電話した。
受話器を取った職員は「えっ、何を意味しているか、ですか……」と言葉に詰まり、「ちょっと調べさせてもらってもいいですか」と言うなり、電話を保留にした。
少しして、説明を受けた通りに記しておくと、「特段意味があるわけではありません。羽咋駅前の商店街の皆さんが賑わいを復活させるために、2005年3月に設置した彫刻です。『また集まって来てくださいね』という意味合いを込めて置いたそうです。彫刻家の馬渕洋さんに造っていただき、全部で5点あります」ということだった。
他にも「ゴゴゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」と掘られた石がある。
「この文字は何だろうと面白がらせて、来てもらおうという戦略ですか」と尋ねると、「そうです、そうです」と職員は調子を合わせる。
ただ、それだけではないようだ。