羽咋駅の近くでは2024年7月1日、新しい交流拠点「LAKUNAはくい」がオープンした。図書カフェや学習スペースが設けられた4階建ての施設だ。被災後にもかかわらず、こうした建物ができたのも、地震の被害がそこまで酷くなかった証拠だろう。
ただ、タクシーの運転手は「地震の前からすると、明らかに観光客は減っています。和倉温泉(七尾市)が被災してしまったので、泊まった帰りに羽咋駅で下車するという人はいません」と話す。
市が最も力を入れている観光拠点「妙成寺」
羽咋市が現在、最も力を入れている観光拠点は、市の北部にある妙成(みょうじょう)寺だ。
700年以上前に創建された日蓮宗の寺院で、江戸時代は加賀藩・前田家の手厚い庇護を受けた。北陸随一と評される五重の塔もある。
これまで天災や火災の影響を受けてこなかったので、建立当時の姿を残す建築物が多い。境内には国の重要文化財が10棟、県の指定文化財が3棟、市の指定文化財が1棟。羽咋市で本当に「常識を超えたすごい物」があるのは、駅前ではなく妙成寺だ。
今回の地震でも、石垣が一部崩れたり、灯籠が倒れたりはしたものの、建築物の被害はほぼなかった。震度7を記録した志賀(しか)町との境はすぐそこなのに驚くべきことだ。
「当時の建築技術がどれだけ高かったか」と商工観光課の職員はうなる。地震に耐えた建築物群を見に行くのも観光の一つだろう。
しかし、拝観者は激減しているようだ。
寺で受付をしていた僧侶に尋ねると、「ここら辺では宿が取れないので、なかなか来てくれません。お寺ですから、盆にかけて来る人は増えるでしょうが」と、言葉少なだった。
妙成寺の国宝化へ「やる気満々」「自信満々」
羽咋市では地震の前から、妙成寺の国宝化を目指していた。
これについても「被災前は盛り上がっていたのですけれど」と、受付の僧侶は元気がない。
文化財建築が多いと、管理が大変だ。市商工観光課の職員は「修繕を手掛けられる業者は限られているのに、一つ直したら、また別の建物を直さなければならなくなるという状態だったようです」と話す。
国宝化を目指した修繕で物入りな時に、石垣などが壊れたうえ、拝観者が激減してしまった。気の毒というほかない。
国宝になれば能登半島全体の希望にはつながるだろうが、果たしてどうなるか。
観光客がほとんどいない、貸し切りのような境内を歩く。
地震に耐えた重厚な建築物が静寂の中にたたずんでいた。
次はいよいよ、震度7を記録した志賀町へ向かう。
観光地はどのようになっているだろう。