夏、人々は行楽地へ向かう。

 能登半島の観光地はどうなっているのだろう。

 2024年1月1日に地震が起きてから半年が経過したというのに、奥能登と呼ばれる震源に近いエリアでは、復興どころか復旧さえ進んでいない地区が多い。「あの日のまま何も変わっていない」と諦め顔で話す被災者がいるほどだ。

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 奥能登で随一の観光名所だった輪島市の朝市は、露店が並んでいた商店街が火災で焼失した。珠洲市でも見附島(別名・軍艦島)が崩落でやせ細り、「奥能登絶景街道」と名づけられた海岸道路も寸断されたままだ。

 岸田文雄首相は能登観光の宿泊費の7割を補助する「復興応援割」の具体化を進めると表明したが、「宿泊できる状態なのか。それ以前の問題として、手をつけなければならないことがあるのではないか」と指摘する声が少なくない。

 果たして、能登を観光することはできるのか。

 取材者というより、一人の観光客として能登半島を巡ってみることにした。

観光案内所でおそるおそる尋ねると「ぜひ来てください」

 まずは、情報収集だ。それにはやはり金沢駅だろう。駅構内に設けられた「観光案内所」を訪れた。フロアには能登観光のパンフレットを並べたコーナーがあり、半島の地図も掲示されている。

 ということは、観光に行ける場所もあるのではないか。おそるおそる尋ねてみた。

能登観光のパンフレットを集めたコーナー(金沢駅観光案内所)

「地震で大変な時に聞きにくいのですけれど、能登で観光はできるのですか」

 案内デスクにいたベテラン女性職員は「もちろん」という表情で、能登半島の地図を指す。

「場所によってはできます。被害が酷かった奥能登の珠洲市や輪島市の方では、まだお受けできる状態ではありませんが、羽咋(はくい)市や志賀(しか)町、あとは七尾市の一部などで観光が可能です。七尾市の能登島ではガラス工房などの施設も営業していますし、水族館も営業再開予定です(取材後の7月20日に再開)」

 能登半島は石川県12市町と富山県1市の計13市町でできている。面積は2404平方kmあり、東京都より広い。現在も通行止めの道路が多く、帰れない地区はあるものの、これだけ広ければ観光できる土地もある。

 ただ、いかにも観光客という感じで訪れるのは気が引けた。その不安を告げると、案内デスクの職員は「そんなことはありません。大丈夫ですよ。地元の皆さんは『ぜひ、来てください』とおっしゃっています」と語る。ホッとした。

能登の観光パンフレットが並ぶ(金沢駅観光案内所)

砂浜を車で走れる「千里浜なぎさドライブウェイ」

「例えば、『千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ』はどうですか。日本で唯一、砂浜を車で走れるんです」と勧めてくれた。

 能登半島のつけ根に位置する宝達志水町の今浜から羽咋市の千里浜まで、約8kmも続く砂浜の道路だ。