普通の砂浜ならタイヤが埋もれてしまうのに、ここでは走れる。秘密は砂だ。白山に源流を発する石川県最大の河川・手取川は暴れ川としても知られており、日本海に大量の砂を運ぶ。海岸に打ち寄せる砂は河口から離れるほど粒が小さくなり、千里浜なぎさドライブウェイ付近では0.2mmぐらいになるのだという。また、この辺りの砂浜は傾斜が緩やかなので海水で湿っている。粒の大きさがそろった砂が湿ると、固く引き締まるから、観光バスでも走れるのである。
石川県観光連盟のHPには「青空の下、打ち寄せる波のすぐ横を颯爽とドライブ。映画のワンシーンのような光景」と書かれている。
震度7でも奥能登ほど被害は大きくなかった志賀町
その先の志賀町にも見どころがある。「巌門(がんもん)では、能登金剛遊覧船が運航しています」と案内デスクの職員が教えてくれた。
断崖や奇岩が続く「能登金剛」の海岸でも、一番の見どころは巌門だ。浸食でできた洞門が幅6m・高さ15m・奥行き60mもの大きさになっている。
しかし、志賀町と言えば、能登半島地震で震度7が計測された地ではないか。大丈夫なのだろうか。
「実は揺れのタイプが珠洲市や輪島市とは違っていたようです。両市ほど被害は大きくありませんでした」と案内デスクの職員が解説する。
砂浜道路、そして絶景の海岸。能登観光の魅力は「海の美しさ」である。
「お勧めした千里浜や巌門は能登半島の西側にあり、荒々しい日本海に面しています。夕陽がとっても美しいだけでなく、夏の穏やかな海はすごくキレイです」。説明しているうちに思い出したのか、職員は次第にうっとりした顔つきになる。
穏やかな七尾湾と「のと鉄道」…地場産の魚介類も味わえる
「かたや能登半島の東側には七尾湾があります。穏やかなので全く違いますよ。七尾市には被害が大きかった地区もあるのですが、七尾駅から穴水駅(穴水町)に向けて第三セクター『のと鉄道』に乗ってみてはどうでしょう。車窓から静かな七尾湾や、昔ながらの漁村風景が見えて、こちらも本当にキレイです。終点の穴水駅の隣には『道の駅あなみず』があり、土産物が充実しています。列車の応援かたがた買物をしてきたという人もいらっしゃいます」
のと鉄道は地震で全線が不通になり、4月6日に完全復旧した。車窓からはブルーシートがかかった屋根や崩れた家など沿線の生々しい被害も見える。美しい海だけでなく、こうした現実をしっかり目に焼き付けることも重要なのだろう。