イメージしてほしいのは漫画『スラムダンク』の有名なシーンだ。フリースローを全くといっていいほど決められない主人公の桜木花道が、ふと思いついて、幼児がボールを投げ上げるかのように、両手でボールを下から上に投げる形でフリースローを放った。作者の井上雄彦は、フリースローの通算成功率が約90%で、NBAで(2024年時点で)歴代3位にランクインしているリック・バリーをこのシーンに合わせて紹介している。

 あれでいいのだ。

 セオリーから外れたシュートフォームは、とてつもなく下手な選手か、成功率が非常に高い選手には認められる。

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 もっとも、前者の場合は、残念ながら日本代表に入るのは難しい。逆に、後者のように高い成功率で決められて、日本代表に選ばれるほどの実力があるのならば、ホーバスの言うように、「相手ディフェンダーを守りにくく」する効果に期待するのは決して悪手とは言えないはずだ。

山本麻衣(24)は両手でシュートを打つスタイルで日本代表入りした

 なお、日本代表で今も両手シュートを放つ4人というのは、シュータータイプの本橋菜子と、キャプテンの林咲希の2人。それに加えて、身長の低い選手が任されることの多い司令塔であるポイントガードの宮崎早織と山本麻衣の2人だ。

 中でも興味深いのは、山本だ。他の3人は中堅からベテランにさしかかる年齢だが、彼女はチームで2番目に若い24歳。他の先輩たちよりもワンハンドシュートの有効性が伝わりつつあるなかで育ってきた選手であるのにもかかわらず、両手でシュートを打つスタイルでここまで登りつめてきた。

©FIBA

 それだけではない。山本は、女子バスケの最高峰であるアメリカのWNBAでのプレーを目標にしており(現在はトヨタ自動車 アンテロープス所属)、オフにはアメリカに渡ってスキルトレーニングを積んでいる。