――癌という言葉を初めて聞いたのはそのときですか?

見栄晴 そう、看護師さんから。先生の表情で何か良くない病気の可能性があるんだろうなとは思ってたんですけど、言われたときはさすがに驚きました。それで家に帰ってすぐに連絡したら、たまたま次の日に予約が取れて。

 紹介先の大きな病院の耳鼻科の先生には、見た瞬間に「癌の可能性が大です」とはっきり言われました。その日にそのままあらゆる検査をされて、終わったら5時間くらい経っていましたね。

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 そのとき、もし癌だった場合どうするかも尋ねてみたんです。そしたら、手術もしくは抗がん剤プラス放射線治療の2択だと。で、手術すると声帯を取らないといけないので、声が出なくなりますと。その時点で、手術の選択肢はないなと自分の中で決断しました。

 

――それはなぜでしょう?

見栄晴 今までずっと声を使って仕事をしてきた僕にとって、声が出なくなるってことは、仕事がなくなるってこと。高校生の娘と嫁もいるのに。

 なのでマスクを取って「実は僕、タレントをやってる見栄晴というんですけども……わかります?」って先生に言ったら、「いや、ごめんなさい、わかんない」って(笑)。だから僕の仕事を説明したうえで、声を失うと完全に仕事を失ってしまうっていうことを先生に伝えました。

――それほどまでに。

見栄晴 僕には声が大事ですって伝えたら、「ではその方針で進めましょう」とすぐに決まりました。ただ、まだその時点では癌と決まったわけじゃなくて、はっきりとした結果は約1週間後にわかる予定だったんですよね。

病院の予定表に「放射線科」の文字を見つけ「俺、癌なんだ」

――その約1週間の間に、疑惑のある病気については調べてましたか?

見栄晴 いや、一切調べなかったです。元々アナログな人間でパソコンとかも使えないから、先生に聞こうと思って。

 で、1週間後にまた病院に行きました。受付表を機械に入れるとその日の予定表が出てくるんですけど、9時に耳鼻咽喉科、その下に“放射線科”って書いてあったんですよ。それを見て、オチ先に言っちゃうんだ、って。

 

――放射線科の予約が入っているということは。

見栄晴 その時点で「俺、癌なんだ」って気付きました。そのあと、主治医とその上司の部長先生の2人と正式にお話をするんですけど、そこで「下咽頭がんのステージ4です」と言われました。それで、「治らない可能性もあるかもしれないけど、今までやったことない薬だろうがなんだろうが、僕のことを実験だと思ってなんでもしてください」って言いました。