見どころ満載! 全長29kmにわたる能登金剛の海岸
全長29kmにもわたる能登金剛の海岸は見どころが満載だ。
巌門の少し南にある「旧福浦(ふくら)灯台」は1876(明治9)年建造で、日本で最も古い木造灯台とされる。
巌門から北に目を移せば、高さ16mと12mの岩が寄り添う「機具(はたご)岩」がある。
さらに増穂浦。冬の砂浜には桜貝など多くの貝が打ち上げられる。
「義経の舟隠し」と呼ばれる断崖の入江もあり、追手から逃れようとした源義経が48隻もの舟を隠したのだという。
そして、ヤセの断崖が続く。
日本海に沈む夕陽も美しく、絶景と言うほかないだろう。
絶景! 広重が描いた「能登瀧之浦」
さて、巌門だ。松本清張の歌碑から海食洞門に向かって歩く。
急坂を下ると、千畳敷岩が見えた。近くには地底に向かうかのような洞窟があり、おそるおそる階段を踏みしめて中に入る。次第に光が見えてきて広間のような場所に出た。海際まで進むと、目の前に巨大な海食洞門があった。
高さ15m・幅6m・奥行き60mという巨大なスケール。この日は海が荒れていて、ザバーンと高波が打ちつける。
巌門から少し離れた海岸には、高さ27mの「鷹の巣岩」が鎮座していた。ラーメンが美味しい岡本澄子さん(81)のドライブイン「ロードパーク女の浦」から見えた岩だ。
この巌門と鷹の巣岩が一望にできる風景は、江戸時代の浮世絵師・初代歌川広重が『六十余州名所図会』に「能登瀧之浦」として描いている。
それほどの絶景であるのに、観光客はいない。
「道路が悪くないので十分観光に来られますが…」
土産物店に寄ってみた。お客さんの入りはどうなのだろう。
「ハッキリ言ってガラガラです。いないと言った方がいいぐらい。平日なんか両手の指で数えられるほどしか店の前を通る人がいません」。家族で経営している40代の女性が嘆く。
「金沢から巌門のある志賀町までは、道路が悪くないので十分観光に来られます。でも、なかなか来てもらえないのです」
様々な要因がある。
石川県と富山県にまたがる能登半島は広い。石川県内の12市町だけでも2173㎢あり、東京都に匹敵する面積だ。このため「金沢に宿泊するだけでは回れず、被災前に能登半島の宿泊の拠点になっていたのは和倉温泉(石川県七尾市)でした。現在はごく一部しか営業しておらず、建物が壊れて休業したり、復旧作業に携わる人の宿舎になっていたりで、観光客はほとんど泊まれません」と女性が説明する。