「海がキレイですよ。地元の皆さんは『ぜひ、来て』とおっしゃっています」
金沢駅の観光案内所でそう勧められた。
石川県志賀(しか)町にある海食洞穴「巌門(がんもん)」だ。奇岩や断崖が29kmも続く「能登金剛」では最大の見所である。
能登半島で観光ができる最北端「巌門」へ
能登半島地震後の観光はどうなるのか。「ここなら観光できる」という案内所職員の「おススメ」に従って現場を回る。金沢駅をレンタカーで出発。千里浜なぎさドライブウェイを経て(#1)、羽咋(はくい)市に寄る(#2)。それから3箇所目の巌門へ向かった。
カーナビの指示通りに県道を曲がると、その先の道路は通行止めになっていた。
路面のヒビ割れや、路肩の断崖の崩落、道路への山崩れがあり、この道では巌門にたどり着けないらしい。目的地はもう目と鼻の先なのに、と落胆した。
やはりここまで来ると、地震の被害が目立つ。震源に近い珠洲市や輪島市などといった奥能登ほどではないものの、震度7が計測された志賀町内なのだ。軒並み家屋が倒壊した奥能登とは揺れの性質が違ったといっても、無傷ではない。
石川県が2024年8月6日にまとめた被災状況によると、志賀町では直接死2人(他に関連死5人)、負傷者104人。住家の損壊は全壊552棟、半壊2402棟、一部損壊4438棟と、かなりの被害が出ている。
ただ、状況は場所によって違い、日常生活に支障がない地区もある。金沢駅の観光案内所で「巌門へ行ってみませんか」と勧められた理由だ。
食洞門はすぐそばまで徒歩で近づける。能登金剛遊覧船の「巌門クルーズ」も運航を再開した。能登半島で観光ができる最北端と言えるだろう。
「鷹の巣岩」の目の前にあるドライブイン
行き止まりの道路を引き返して県道に戻り、500mほど先にある別の巌門入口へ向かうことにした。
レンタカーを方向転換させる。と、その時、さきほど曲がった県道の角にドライブインがあったことに気づいた。
県道側からだと民家のように見えたが、海抜70mという海側には駐車場が整備されていた。海から駆け上がる傾斜の上に建っているので水平線まで見通せる。ベンチも据えつけられていた。
目の前には高さ27mの「鷹の巣岩」がある。観光案内板には、頂上にタカが巣を造ったので、その呼び名がついたと書かれていた。
せっかくだから、店に寄ってみることにした。
やや怖かったのは、駐車場が海側にズリ落ちたのか、傾いていたことだ。アスファルトには深々とした亀裂が何本も走っていた。その亀裂に草が生えていたのが、発災からの月日を感じさせる。
「ロードパーク女の浦」と書かれた店に入った。食事ができるだけでなく、物産も販売しているようだ。
「こんにちは」。声を掛けたが、返事がない。客もいない。
節電のためか、天井の電灯は半分消されている。
昼過ぎだったので、もう食事の営業は終わってしまったのだろうか。