16ミリで撮った大島弓子の『赤すいか黄すいか』が大ヒット

――そうやって自主映画界の人たちとつながっていって、次回作を作るんですね。

犬童 大学に入ったら大島弓子を映画にすると決めていました。誰も少女漫画を映画にしないし、大島弓子を映像化する人っていなかったので、最初に自分が手をつけると決めていて。『赤すいか黄すいか』を16ミリで撮りました。

――16ミリだと、結構予算がかかったんじゃないですか。

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犬童 100万ぐらいかかってるかな。もうちょっとかかってるかな。

――これは1時間ぐらいでしたっけ。

犬童 40分ぐらいですね。モノクロで。文芸坐の地下にあったル・ピリエで今関(あきよし)さんの『フルーツバスケット』(注2)と2本立てやったんですけど、すごくヒットした。

――このチラシはよく見ました。

2作を1枚にした文芸坐ル・ピリエのチラシ

犬童 すごいお客さんが入って。それに目を付けた文芸坐が、いけるんじゃないかといって次回作にお金を出してくれたんです。

――マインド・ウェーブ・シネマ(注3)ですね。

犬童 これは2本で100万円くれたんです。だから、8ミリで50万ずつかけて作ってるんです。これもすごい人が入りましたよ。

――じゃあ、文芸坐は回収できたんですね。

犬童 当時、回収のこととか気にしてないからな。というか、今も気にしてないんだけど(笑)。どうなんですかね。50万だったらできてるかもね。

――できてるんじゃないですか。その頃、文芸坐は『アナザ・サイド』(注4)とか何本か自主映画に出資するんですが、みんな回収できなかったそうです。僕が『星空のむこうの国』を作ろうとして文芸坐に出資を頼みに行ったら、そう聞かされました。

犬童 『アナザ・サイド』はすごいお金かかってるもん。16ミリの長編で。

犬童一心監督 撮影 藍河兼一

――でも、自主映画に映画館がお金を出すって、いい時代でしたね。

犬童 そういうブームなんですよね。手塚君と今関さんも上映会すごくやってたじゃないですか。あれもお客さんが来ていたし。ちゃんと宣伝してお客さんをつかんで自主映画を見せるというのをやり始めていたのは、やっぱり最初は手塚君と今関さんですよ。

――そうですね。葉っぱ2枚の上映会(注5)ですね。

犬童 そうそう。小林弘利さん(注6)も一緒にやってて。今関さんが次は文芸坐とやるという時に、僕が加わったみたいな流れですね。