日常の風景しか出ないからお金がかからない

――8ミリや16ミリの映画を作っていって、作りたいものがだんだん明確になってきたんですか? 

犬童 いや、そんなになってないです。僕はもともと『ダーティハリー』とかサム・ペキンパーのファンだったので、そういうのを作りたいと思っているんだけど、自主映画で作るとなると…。だから、石井聰亙さんがすごいのは、8ミリでやくざ映画とか作るじゃないですか(注7)。しかもちゃんと。あれができないんですよね。最初に大島弓子さんをやろうと思ったのも、大島弓子を映像化することが重要だという理由と、もう一つは、金がかからないから。

――あの世界観ならお金がかからないと。

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犬童 女の子が出てきて、日常の風景しか出ないからお金がかかり過ぎない。でも、恐怖映画みたいなものを作りたいと言い始めると、とんでもなくお金がかかっていく。美術とか衣装とか、ロケ場所もこうじゃなきゃいけないとか。学園ものとか、女の子を主人公にした映画にしておけば、お金が出すぎない。そういう考え方はその後も続いて、『二人が喋ってる。』という映画も、若い2人組の女性漫才師の話にすれば、そんなにお金はかからないだろうと考えた。

犬童一心監督 撮影 藍河兼一

撮影 藍河兼一

注釈
1)笠原幸一 パロディアス・ユニティのメンバー。『気狂いフィルム99』は82年のPFFで入選。

2)『フルーツバスケット』1982年8ミリ67分 三人の女の子が出会って船で川を下る物語。

3)マインドウェーブシネマ 文芸坐を中心にした自主映画プロジェクト。今関あきよし監督『MILK〇MILK』、犬童一心監督『夏がいっぱい物語』の2本の8ミリ映画をプロデュース。

4)『アナザ・サイド』1980年16ミリ80分 監督:山川直人 出演:室井滋 内藤剛志

5)葉っぱ2枚の上映会 小林弘利監督『ボーイハント』と手塚眞監督『FANTASTIC★PARTY』を上映することでとしま区民センター始まった自主上映会。入場料は葉っぱ1枚持ってくれば無料。ただし、退場時にカンパをねだられた。

6)小林弘利 小説家、脚本家。犬童作品は『二人が喋ってる。』『死に花』などを担当。

7)石井聰亙(現・石井岳龍)監督の『突撃!博多愚連隊』(1978)のこと。

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◎犬童一心監督の8ミリ作品『気分を変えて?』の上映があります。

 第46回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2024〔9月7日(土)~21日(土)国立映画アーカイブにて開催(※月曜休館)〕の8ミリフィルム映画制作熱のピーク時代につくられた傑作選を特集する【自由だぜ!80~90年代自主映画】にて。

9月7日(土)12:00~ 国立映画アーカイブ(小ホール)

詳しくは公式サイト https://pff.jp/46th/