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大阪の路上で隠し撮りしたスカラシップ作品『二人が喋ってる。』

――『二人が喋ってる。』はCMの仕事をしながら撮ったんですか?

犬童 大阪の若い女性漫才コンビの解散の危機を描いているんですけど、商業映画じゃなくて、スカラシップの作品なんです。キリン・コンテンポラリー・アワードで山村浩二さん(注1)と作ったアニメーションと実写を組み合わせた短編が最優秀作品賞になった。スカラシップが付いていて、「翌年までに必ず何か作ってください。お金は出しますから」と言われて作った。だから、この映画は僕の中に予定はなかったんです。授賞式で山村君と大阪へ行って、ずっと歩き回って、メチャクチャ面白かったんです。もう外国だよね。だから、外国ロケの映画を作れる気分で撮ったのがこの映画。

『二人が喋ってる。/金魚の一生』(販売:角川エンタテインメント)

――いろいろ街の中で芝居してますもんね。

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犬童 全部隠し撮りしてる。ジャイロ付きのバイクの荷台にカメラマンを乗せるじゃないですか。それにでっかい冷蔵庫の段ボールをかぶせる。レンズだけ出るようになっていて、段ボールを運んでいるようにしか見えない。

――周りの人が見てますよね。

犬童 あれ、芝居してる人を見てるんですよね。すごく撮影も面白かったですよ。

――あれは台本どおりなんですか? それともアドリブが多いんですか?

犬童 ほとんど台本どおりです。この人たちがアドリブを始めると収拾がつかないから、基本アドリブはなしで。やってる漫才まで台本に書いてある。

――そうなんですね。アドリブかなと思うぐらい、すごく自然でした。久々に自主映画スタイルで映画を撮って、また映画の世界に戻ろうと思ったんですか?

犬童 これはスカラシップで撮っているから、翌年のキリン・コンテンポラリー・アワードで上映しただけ。全然何の話題にもならず、批評も一つも出ず、マスコミにも全然出なかった。