誰もがその名を知る存在なのに、実像はなかなかつかめない。それでよけいに勝手なイメージが増幅し、肥大化した虚像がひとり歩きしていく―― 。それが木村拓哉という存在だ。真の姿を知りたいものだが、それを語れる適任者は思いつかない。いや、ひとりだけいる。放送作家として長年、木村拓哉およびSMAPの面々と苦楽を共にしてきた、鈴木おさむである。
2024年3月31日に放送作家引退したのを機に、「小説SMAP」をうたった『もう明日が待っている』を刊行。SMAPの素顔の一端を明かしたのは記憶に新しい。テレビの世界を離れて約半年。いまだから語れる「木村拓哉論」「SMAP論」を伺おう。(全2回の2回目/#1から読む)
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結婚があぶり出した、5人でいることの強みとありがたさ
木村拓哉の結婚に関する顛末は、『もう明日が待っている』にも小説としてしっかりと書き込みました。
当時の衝撃たるや、それは大きいものでした。だって彼は日本一モテる男として君臨していました。何しろ直近の主演作『ビューティフルライフ』は、視聴率40%を超えていたんです。
そんなトップスターが、結婚し子どもも授かったという。ヘタをすれば、これまで築き上げてきたものがすべて崩れ去る恐れだってある。実際、周りのスタッフの中にもそうなると思っていた人は少なくなかったと思います。快進撃を続けていたバラエティ番組「SMAP×SMAP」の視聴率もこれで落ちてしまうだろう、次作のドラマとして『HERO』が決まっているものの、これまでと同じように数字は取れないんじゃないか……そんな声も聞こえてきました。
でも、そうはならなかった。結婚のニュースは衝撃的だったけれど、結果的には、木村拓哉とSMAPの人気に影響を及ぼす事態とはなりませんでした。
なぜだったのか。飯島さんのブレないマネジメントのもと、対応全般にわたって木村拓哉本人が、一貫して真摯に男らしくふるまったというのが、まずは理由のひとつ。
また本人の力だけじゃなく、彼がSMAPというグループの一員だったということも、大いに助けになりました。