すべてのタワマンで電気室移転が行われたかは不明

そしてこの武蔵小杉タワマンの台風被害は、その他にもいろいろな教訓をもたらした。

まず、この場合の内水氾濫の原因は、雨水などを河川に放出する水門が閉じられなかったことにより、水位が上昇した多摩川からの逆流が原因とされている。

その水門を管理していたのは川崎市だ。今はその開閉が電動化され、リモコンでも閉じられるようになった。

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さらに、このマンションの電気室はその後地下3階から氾濫による冠水被害の心配がない上の階に移設されたという。

この事件以降に計画されたタワマンは、電気室を地上3階以上に置く設計になっていると推測する。また、既存のタワマンで地下に電気室が設置されている物件は、3階以上への移設を行ったケースもあるはずだ。

ただし、そういうことは管理組合や管理会社の危機意識の強弱に影響される。電気室移転の話は出たが、事件の記憶が薄らぐとともにナアナアになっているケースも少なくなさそうだ。もちろん、少なくないコスト負担も伴う。

中には「うちのマンションは多摩川から離れているから大丈夫」なんて考えて、何もしていないケースもあるだろう。

タワマンは低地に位置している場合が多い

今後、あの2019年の台風19号と同等かそれ以上に強力な台風がやってこないと考える理由はない。むしろ、さらにパワフルな台風に襲われることを想定すべきだろう。

特にタワマンの場合、そのアキレス腱は電気系統とエレベーター、そしてトイレだ。

タワマンの多くは、わりあい低地に位置している場合が多い。湾岸の埋め立て地や大きな河川の近くなどは、倉庫や工場の跡地などまとまった土地が出やすい傾向にある。そういった土地がタワマンとして開発されるのだ。

逆に、比較的標高の高い山の手はお屋敷町から高級住宅地へと移り変わったケースが多く、タワマンにふさわしい事業用地は出にくい。さらに、山の手エリアは建築規制上もタワマンを建てにくい場合が多い。