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――不思議な距離感ですね。

呉監督 そうですね。夫は「任せられたら全部しっかりやるから放っておいてくれ」「任せたときは細かいことは言わないからやってくれ」というスタンス。しかも私以上にちゃんとやれる人です。だから今はもう、そういう人なんだと思うようになりました。

――それが心地よい、ということに気づいたのですね。

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©文藝春秋

呉監督 こういう人なんだとわかるまでは時間がかかりましたけどね。今の形に、結婚生活10年目にしてやっと辿り着いたという感じです。まだまだ知らないところだらけ、でしょうけれど。

「まだまだ圧倒的に女性にとっては厳しい環境ですね」

――そのように8年ぶりに戻った映画の現場ですが、働きやすさに変化は感じましたか?

呉監督 まだまだ圧倒的に女性にとっては厳しい環境ですね。私は監督という立場なので自分の裁量でなんとかなる部分がありますが、女性スタッフは子どもを産んだあとは復帰しにくい業界だと思います。早朝から始まる撮影もあるし、終了時間も毎日読めないですから。

©五十嵐大/幻冬舎©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

――呉監督のように、30代で実績を残さないと女性が子どもを産んだ後も映画業界でずっと働いていくのは難しいのでしょうか。

呉監督 解決方法自体はシンプルで、映画を作る予算がもっと増えること。たとえば1カ月で撮影している映画を3カ月かけられるようになれば、毎日夕方までに撮影が終わりスタッフ全員が寝不足にならずに済みます。

 昨今は「現場に託児所を」という声も聞きますが、私はいまいちピンときていません……。子ども自身はいつもの環境で過ごせるのが安心でしょうし、そもそも子どもを現場まで連れていくのが大変なので。目指すべきは、子どもがいる、いないに関わらず、どんなスタッフも健全な時間と環境で働くことができる映画界ですね。