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親しいからこそ、人との距離はきちんと取りたい

――そうなんですね。

「『個は個である』『各々好き勝手』っていうのがいいと、僕は思っているんです。この不便さの中に楽しみを生み出すには、なんでも自力でやった方が面白い。野菜も、木の伐採も、薪作りも。田舎は、お金はいらないです。電気代はかからない。けれども、暖を取るためには薪を割らないといけない。薪を割ってようやく暖が取れた時に、ああ、生きててよかったと思う。そうやって各々が自力で生活する中で行き会って、偶然のように合流して、一緒にぶどうをつくったり木を伐採したり……。そんな感じで、基本的にはあんまり仲良くしてないというか(笑)。ベタベタにくっついてはいないですね」

©︎文藝春秋/釜谷洋史

――むしろ距離があるからうまくいっている?

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「僕は今、携帯を持っていないこともあって、あんまり人と約束もしないし、決めすぎることはしないんです。『こうあらねばならない』とか『なんでこうしてくれないんだ』とか、期待とか約束が裏切られると憤りになったり怒りになったりする。それもなんか煩わしいし。親しいからこそ、人との距離はきちんと取りたいと思っています」

――携帯、ないんですね。

「ガラケーがあったんですが、なくしちゃった(笑)。でもiPadがあるから必要最低限の仕事の連絡はとれるし、電子機器に頼らない生活というのも模索していきたいなと思っています」

“利他”の輪がどんどん広がり、生きている意味を実感

――来年にはお子さんが生まれますが、子育ても基本的に「自力」という考え方ですか?

「そうですね。でも自力もありながら他力に頼るところも、絶対出てくると思いますし、それが悪いわけではない」

©︎文藝春秋/釜谷洋史

――今回の再婚、妊娠報告に地元の方はなんと?

「すごく喜んでくれました。地域のおっちゃん、おばちゃんが、『長生きする理由ができた。だってお前ところの子ども育てないといけないもんな』と言ってくれて。気が早いけど、名前を考えてくれたり(笑)。僕は、自分のためだけに生きられるほど、この世界ってそんなに面白いことに溢れてないと思っていて。だから今回、僕らのことを喜んでくれて、……そうやって、“利他”の輪がどんどん広がっていくのを見て、生きている意味を実感しました。これを幸せって呼ぶのかなって」