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だが、22年3月に長野地裁松本支部であった初公判の検察側冒頭陳述によると、アニマル桃太郎の繁殖場では「重度の毛玉による歩行困難」な犬がいたり、「ほとんどのケージにおいて金網が用いられていた」りしたという。松本市保健所が適切に立ち入り検査をしていれば、長野県警による家宅捜索よりも前に、犬たちを救う道筋がつけられたはずだった。

県警が捜索に入るまで、飼育状況を確認していなかった

松本市保健所食品・生活衛生課の大和(おおわ)真一課長は「大規模な業者であり、特別であるという認識はあったが、県警が捜索に入るまで一度も立ち入り監視を行っておらず、飼育状況を確認できていなかった」と認める。

行政はなぜ機能しなかったのか――。松本市が犬猫の繁殖業者など第1種動物取扱業者に対する監視・指導業務を担うようになったのは、21年4月に同市が中核市になって以降だ。それまで監視・指導に責任があったのは長野県。

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大和課長によると、県からの引き継ぎは「正式には、書類をそのまま引き継いだだけ。具体的な中身について係長レベルで話を聞いたりしてはいたが、アニマル桃太郎は継続的に対応している案件の一つであり、切迫した状況であるという危機感は伝わってこなかった」。

大和課長は長野県の公衆衛生獣医師として勤務し、定年退職後、松本市が中核市となるにあたり、松本市保健所の食品・生活衛生課立ち上げのため任期付き職員となった。長く保健所業務に携わってきた経験から、「食品関連でも動物関連でも、ずっと事業者と接してきたが、犯罪者を作るために監視、指導にあたるのではない。法令違反があれば、犯罪者にならないよう是正してもらうのが仕事だと考えてきた」と話す。

異常な飼い方という認識はまったくなかった

でも今回は「犯罪」として裁かれようとしている。大和課長は言う。

「歴史的により付き合いが長い食品関連の事業者は、事業者自身、食中毒などを出したくない思いが強い。保健所が問題を指摘すると、しっかり改善してくれる。だが動物関連の事業者は、それとは少し雰囲気が違う。その違いの認識が、我々は甘かったかもしれない」