1ページ目から読む
8/11ページ目

さらに静岡市は「一番の問題は移動販売。現状の省令では適切な指導、処分が難しい」とし、さいたま市は「動物の健康や安全を守るためには、業者のもとで虐待されるなどしている動物を行政が強制的に緊急保護できるような、さらに踏み込んだ法整備が必要だ」と指摘していた。

「レッドカード基準」の実効性はいまだに乏しい

私は継続的に各自治体の状況をウォッチする必要があると考え、23年12月にも同様の調査を行った(129自治体、回収率100%、繁殖業者やペットショップに対する監視・指導を担う自治体はそのうち107)。

立ち入り検査終了のめどがたたない自治体は引き続き27あったが、この調査時点までに、口頭や文書による「指導」の対象になった事業所は全国で計4997まで増えていた(一部自治体は延べ数で回答、9自治体は未集計)。やはり「事業者と行政が同じものを見て確認できるため説明しやすい」(福島市)、「指導の根拠が具体化され、(監視・指導の)一助になっていると感じる」(埼玉県越谷市)との声があがった。

ADVERTISEMENT

ただ、飼育環境を改善するよう「命令」する行政処分が下されたのはいまだ4事業所にとどまり、一方で一つの事業所に対して「指導」だけを3回以上繰り返す、行政処分を躊躇するような事例がみられた自治体は51にのぼった。「レッドカードを出しやすい明確な基準」(小泉氏)として制定された飼養管理基準省令だが、その意味での実効性はいまだ乏しいままのようだった。

もっとも、

「安易な動物取扱業の登録申請が減り、相談段階における抑制になっていると感じる」(徳島県)
「基準に対応できないことが理由と推察される業者の自主廃業が現に確認されている。悪質な事業者の排除という目的の達成には有用であると考える」(沖縄県)

などの指摘もあった。飼養管理基準省令の施行を理由に廃業した業者があったとする自治体は31にのぼった。