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まず立ち入り検査はどの程度進んだのか。回答を集計すると、23年度までかかる自治体が41にのぼり、立ち入りを終えるめどが立っていない自治体がまだ27もあった。確認事項が多岐にわたり、検査時間が長くなる傾向があることが背景にあるとみられ、たとえば22年度中に終了予定の岐阜県も「1件あたりの監視・指導の時間が30分程度から1時間程度に増大した」。

職員数が限られる中核市を中心に「人員不足のなか業者への立ち入り検査の時間がなかなか確保できない」(福島県いわき市)などの声も寄せられた。

「犬猫の飼育環境は向上している」との声もあるが…

一方、飼養管理基準省令が適切な指導につながっていることは確かなようだ。

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埼玉県の担当者は「これまでのあいまいな基準では、ケージが『狭い』と指摘しても、業者は『十分だ』と主張して水掛け論になっていた。飼養管理基準省令によって業者からのそうした反論はなくなり、指導が徹底できるようになった。多くの業者で、飼育環境は改善した。今までより立ち入り検査に時間がかかるが、そのぶん将来的に、状態が悪い業者の指導で苦労することは減るだろう」と話す。

調査の自由記入欄には、

「より詳しく、的確に指導できるようになった。犬猫の飼養環境は向上している」(和歌山県)
「指導のばらつきは確実に少なくなった」(大分県)
「具体的な指導がしやすくなった」(浜松市)

などと、飼養管理基準省令の実効性の高さを評価する声が多く集まった。

結果として、口頭や文書による「指導」の対象になった事業所は全国で計3993にのぼった(一部自治体は延べ数で回答、7自治体は未集計)。98事業所への指導を行った福岡県は「身動きができないような狭さで飼育されていた犬猫の飼育環境が改善された」とする。迅速に対応することは現実的には難しい

ただ「勧告」にまで至ったのは計13事業所にとどまる。行政処分にあたる「命令」が出されたのは2事業所にすぎなかった。