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環境省が自治体向けに作った飼養管理基準省令の解説書(運用指針)では、問題のある事業者に対して「勧告を速やかに行うことが重要」「勧告を経て、行政処分である命令・登録取消処分等を速やかに行うこと」「躊躇(ちゅうちょ)することなく厳正かつ速やかな対処をすることが法の要請するところ」などとしているのだが……。

たとえば、山形市の担当者は「勧告や命令は業者にとって重い。慎重な判断をせざるを得ない」とする。広島市の担当者も「優良な業者は指導すれば改善するが、自分のやり方を一切まげず、改善してくれない業者もある」と明かしたうえで、そうした業者には「何とか改善してくれるよう、繰り返し指導するしかない。何度も電話をかけ、何度も現地に足を運ぶこともある」と言う。

一方、さいたま市では、市内の住宅街で営業を続けてきた猫の繁殖・販売業者に対して21年10月以降、3度にわたり改善するよう勧告を行った。業者は「基準があることは理解するが急には対応できない」などと主張、指導に従わなかった。さいたま市は22年春に業者名を公表し、次いで改善命令も出した。並行して刑事告発の準備も進め、経営者は同年9月、埼玉県警に動物愛護法違反(虐待)の疑いで逮捕された。

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「アポなし検査」をしてもごまかされてしまう

さいたま市の担当者は「例年約120件の立ち入り検査をしているが、そのうち半分程度はアポ無しで行う。それでも、この業者もそうだったが、『今日は都合が悪いから後日』などと拒否されて結局、状態の悪い動物を隠されたりする。行政の権限の範囲では無理には押し入れず、飼養管理基準省令が守られているかどうか確認が難しい面もある。警察との連携が必要だ」と話す。

自治体の現場では課題も見え始めた。自治体担当者らから「確認のしようがない」(静岡市)との指摘が寄せられた基準が複数あった。

たとえば、運動スペースがない狭めのケージで犬猫を飼育する場合、「1日3時間以上」運動場で自由にさせるという規制がそうだ。鳥取市の担当者も「立ち入り検査の際に1日何回、何匹ずつ運動場に出しているのか尋ね、計算が合うか確認している」というが、そこまでしても、実際のところはわからないと嘆いた。雌の交配年齢や出産回数(犬は6回まで)についても「確認できる範囲は限られている」(さいたま市)という声などがあった。