1ページ目から読む
9/11ページ目

「命」を物扱いすること自体に無理がある

一方でこの時の調査では、繁殖を引退した犬猫の取り扱いにつて、複数の自治体から問題点が指摘された。

「繁殖引退犬・猫を複数頭飼養している事業者があり、事業所で飼養される犬猫すべてが適切に飼養されるためのルールが必要」(北海道)
「従業員1人当たりの飼養保管頭数が制限されることになったが、引退動物が飼養管理等数に入らないことが抜け道となり、指導が難しくなっている」(福井市)

さらに高松市は「ケージ等の基準や従業員数の基準を満たせば、いくらでも規模を拡大することが可能であり、さらに繁殖引退後に販売に供される犬猫は規制から外れることから、善悪にかかわらず、経済的状況によって起こる飼育崩壊の危険性は残ったままです」としつつ、こう指摘した。「『命』の消費・流通の仕組みがほかの『物』と同じ状態にあることに、無理があるように思います」

ADVERTISEMENT

飼養管理基準省令で規制する内容は、およそ3年という時間をかけて議論され、犬猫の健康や安全を守るために定められたものだ。施行前からいくつか問題が残されていたことに加え、自治体の現場で運用が始まって見えてきた課題がいくつもある。業者のもとにいる犬猫の飼育環境を確実に向上させ、かつ法令順守を徹底させるために、環境省と各自治体はより一層の努力を払い、知恵を絞る必要があるのは明らかな状況だった。

「大量販売」は「大量生産」を支えている

アニマル桃太郎事件の波紋は、ペット業界にも大きく広がった。

アニマル桃太郎は約1千匹の犬を抱え、繁殖業を営んでいた。埼玉県内のペットオークション(競り市)には毎週20~30匹の子犬を出品。子犬たちはペットショップのバイヤーによって落札され、各地のショップ店頭で販売されていた。

関東地方を中心に約50店を展開するコジマ(東京都江東区)でも販売実績が確認できた。事件発覚の1年前までさかのぼって購入者に連絡を取り、健康に問題があったり血統書が届かなかったりするケースなどについて、返金する対応を取った。