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一方で、松本市が中核市に移行する前まで責任があった長野県は、この事件をどう検証したのか。

長野県食品・生活衛生課の高井剛介(ごうすけ)係長は、県内の保健所で動物愛護法関連の業務などに携わった後、21年4月、現職に着任した。「県では、限られた人員のなかで選択と集中をはかり、飼育数の多い繁殖・販売業者については年1回のペースで立ち入り検査を行ってきた」と言い、アニマル桃太郎の繁殖場については「異常な臭気を感じた職員もいたが、換気をするよう指導していた程度。異常な飼い方という認識はなく、そのままで良しとしていたようだ」と説明する。

長野県は、記録の残る16年度以降、計9回の立ち入り検査をしている。最後は21年3月、2カ所あった繁殖場のうちの一つに入った。前年12月に立ち入った際、飼育数を減らし、掃除と換気を徹底するよう指導していたが、掃除と換気の面で改善は見られず、飼育数は「500匹いたのが495匹になった」との報告を受けただけだった。これ以前も、同じような内容の指導を繰り返すにとどまっていた。

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指導を繰り返しただけで「勧告」すら行わなかった

現場を確認しながら、長年にわたって虐待的な状況を見過ごしてきた責任は重い。高井係長は「事前に通告して立ち入り検査に行っているのに、掃除も換気もしていない。そんな状態が長年にわたって続いてきた。冷静になって考えれば、きわめて悪質な業者。なぜ悪質性に気付けなかったのか、反省しないといけない」と認める。

動物愛護法では、飼養管理基準省令が制定される以前から、環境省が定める基準に適合していない状況がある場合、業者に対して「勧告」ができ、それでも改善が見られない場合には「命令」、続いて「登録取り消し」または「業務停止」の処分を課せる。

だが、アニマル桃太郎に対してはただ指導を繰り返しただけ。勧告すら行っていなかった。長野県は21年10月、検証チームを発足させた。22年3月までに、問題が起きた背景を「法による措置を実質的に非常に困難なものと思い込んでいた」「法改正の趣旨などに対応した主体的な考えや行動ができなかった」などと結論づけた。