舞台は2001年、インドの小さな村。結婚式を挙げたばかりの若い夫婦は、連れ立って混雑した列車に乗り込んだ。しかし、遠く離れた新郎の村に辿り着いてみると、自分の花嫁だと思い手を引いてきた女性は、実は別人だったと判明する。というのも、彼女たちは古い風習にのっとって、親しい人たち以外とは目を合わせないよう、顔をベールですっぽり覆っていたのだ。

「“花嫁の取り違え”という非常に引きが強い導入部に、一体これからどうなるんだ? と、とてもワクワクしました。しかも素晴らしいのは、その後の展開も含めて明るくユーモラスに物語が描かれていく点です。そのうえ社会風刺もきかせつつ。エンターテインメントとして最高の作品だと思いました」と、公開間近のインド映画『花嫁はどこへ?』の魅力を熱く語るのは、インドの国民的大スター、アーミル・カーンさんだ。ヒット作『きっと、うまくいく』(09)などで主演し、世界中の映画ファンを魅了し続けている名俳優のカーンさんだが、本作ではあえて出演はせず、プロデューサーに徹している。

アーミル・カーンさん

「最初は、もちろん出演するつもりでスクリーンテストまで行っていました。でも、この作品のことを考えた時、“あの役”は私じゃないほうがいいと判断したんです(だから、どの役のことかは秘密です)」

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 そこまで惚れ込んだ本作の原案に出会ったのは、自身が審査員を務める脚本コンテストでのこと。ぜひ映画化したいと思いを託したのは、元妻であり、気鋭の映画監督であるキラン・ラオさんだった。

「彼女とは何度もタッグを組み、さまざまな仕事をしてきました。ですから、その誠実さには信頼を置いています。本作はドラマチックでありながら、心の動きはとても繊細です。過剰な演出は、その良さを台無しにしかねない。そこで、人も物語も、誠実に描いてくれるラオ監督なら、と思いました。さらに、2人の花嫁を通して、インド社会が抱えている女性の立場を巡る問題、家父長制などについても描く作品なので、そういう意味で、当事者である女性に作ってほしいという思いもありました」

©Aamir Khan Films LLP 2024
配給:松竹

 慌てふためき、本当の花嫁を探し始める新郎のディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)。一方、取り違えられた花嫁のジャヤ(プラティバー・ランター)は、なぜか涼しい顔。それどころか何か企んでいるような気配も……。そして、実は別の駅で置き去りにされている本当の花嫁プール(ニターンシー・ゴーエル)は、生まれて初めて“自分の頭で考え、動く”ことを迫られて――。事情も性格も全く違う、2人の花嫁の運命は?

「結婚を通して、インドの小さな村の女性の選択と成長を描いた映画です。ご覧になった日本の皆さんが何を感じるのか、とても興味があります。まずはエンタメとして思い切り楽しんでほしいですし、さらに何かを受け取って下さったら、もっとうれしいです」

Aamir Khan/1965年生まれ。インド・ムンバイ出身。『ラガーン』(01)、『きっと、うまくいく』(09)、『ダンガル きっと、つよくなる』(16)などで主演。“インドの国宝”の異名を持つトップ俳優。監督・製作も手掛ける。社会的・文化的なテーマをボリウッド映画にもたらしたことでも知られる。

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映画『花嫁はどこへ?』(10月4日全国公開)
https://movies.shochiku.co.jp/lostladies/