人間にとって最適な睡眠時間はどのくらいか。日本睡眠学会理事で医師の櫻井武さんは「1982年、アメリカの100万人以上を対象にした調査では、6.5〜7.4時間睡眠の死亡危険率がもっとも低いことが示されている。しかし、これは調査対象者が30〜102歳の男女と幅広く、睡眠時間もベッドでゴロゴロする時間も含まれている可能性が高いので、正確性に欠けていると考えるべきだ。自分の最適な睡眠時間の目安としては、昼間、眠気に襲われることなく、本来やるべき作業をしっかり行なうことができるかどうかをみるといい」という――。

※本稿は、櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/fongleon356 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fongleon356

起きているときの脳は、常に情報を伝え合っている

起きているときの脳は、さまざまな体験と行動を繰り返して、それを記憶しています。

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たとえば朝、出社するとき「風が強いな。交差点で自転車の事故を目撃した。花の香りがした。近所の人と挨拶をした。駅のホームで手袋が落ちていた。友だちから旅行の誘いのメールが入った……」などの出来事があったとします。

これらの体験と行動は、脳の1000億ある神経細胞のシナプスという接続部分で、神経伝達物質をやりとりして脳に溜め込まれています。

起きているときに、たくさんの情報を伝え合っている神経細胞同士のシナプスは「強度」が上がっています。繰り返し使うほどに、シナプスは強く(つまりは、より記憶が定着する)なります。

ちなみに、このシナプスの強度が上がっていることが「睡眠圧」を生み出しているという説が有力になっているのです。

難しいですね。こんなたとえはどうでしょう。

起きているときは、頭のなかには、1つのコンセントに電源タップを使ってたくさんの電気機器をつないでいる「たこ足配線」の状態だとイメージしてみてください。記憶するべきことが多く、たくさん神経細胞同士を“接続”する必要があるからです。