ちなみに、認知機能を調べた実験では、睡眠時間「7時間」と「9時間」との比較でさえ、9時間睡眠のほうが認知機能は高かったという結果もあります。
また発明王のエジソンやフランス皇帝のナポレオンは短時間睡眠で有名ですが、アインシュタインは10時間以上眠っていたともいわれています。これら偉人の睡眠習慣から、自らの睡眠時間を導き出すのも早急です。
近年ではメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手がかなり長く睡眠をとっていることで有名ですが、パフォーマンスを発揮するために必要な睡眠時間を把握し、確保することで、偉業を成し遂げているのかもしれません。
自分の最適な睡眠時間を知るための“たった1つ”の方法
自分の最適な睡眠時間を知るためにもっともわかりやすいのが、昼間、眠気に襲われることなく、本来やるべき作業をしっかり行なうことができる、ということです。あくまで、昼間を快適に過ごせるかどうかが、自分に適した睡眠時間の目安です。その目安の時間以上、無理に眠る必要はありません。
「目安の時間」とお伝えしましたが、睡眠は融通が利きます。あまり活動しなかった日には、睡眠時間が短くなるかもしれません。どうしてもいま成し遂げなければならない仕事があれば、眠りを犠牲にすることもあるでしょう。
その場合でも、かなりの高い能力を発揮することができるはずです。もちろん、そのあとに「睡眠負債」を返済する必要がありますが、睡眠時間は、柔軟に考えることも大事なポイントです。
睡眠時間にこだわり、時間の短さや長さだけに気を配りすぎると、かえって眠りに悪影響を及ぼしかねません。自分にとって適正な睡眠時間は、昼間に眠気を感じないだけ眠れば良い――。そのぐらいの気軽な気持ちで考えておいたほうが良いでしょう。
医師、日本睡眠学会理事
医学博士。筑波大学医学医療系および国際統合睡眠医科学研究機構教授。筑波大学大学院医学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、筑波大学基礎医学系講師、テキサス大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、筑波大学大学院准教授、金沢大学医薬保健研究域教授を経て、現職。1998年、覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見。平成12年度つくば奨励賞、第14回安藤百福賞大賞、第65回中日文化賞、平成25年度文部科学大臣表彰科学技術賞、第2回塩野賞受賞。著書、テレビ出演など多数。