愛媛大学抗加齢医学講座教授で循環器内科医の伊賀瀬道也氏が、「血管力向上に理想的な運動」として提唱するのがウォーキングと「ゆるジャンプ」だ。伊賀瀬医師自身も最大血圧を減らしたという、その独特な運動を紹介する。

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ウォーキングの長所・短所

 ウォーキングというと、かつては「1日1万歩」が推奨されていました。歩く速度によるものの、中高年であれば1時間半ほどかかるため、現役世代だと毎日続けるのは難しいでしょう。高齢者なら初日でヘトヘトに疲れ果て、習慣化できなかったという声を数多く聞いています。

 私自身は週3回、車通勤をあえて徒歩に切り替えて、往復1時間弱は歩くようにしています。職場である病院内での歩数を合わせると、その日は1万歩近くになります。しかし週平均では5000歩前後です。自分ができないことを患者さんには勧められないので、「最低限の目標を4000〜5000歩にして、あとはできる範囲で厚労省の目標値の6000歩に近づけるように頑張りましょう」とお伝えしています。

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 なお、私たちの抗加齢ドックのデータによると、6000歩歩くのに男性では約60分、女性では約78分かかっています。

伊賀瀬道也氏 Ⓒ文藝春秋

 最低限の目標を4000〜5000歩としているのは、他にも理由があります。

 日本人の1日あたりの歩数にかんする大規模研究としては、東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生による、群馬県中之条町の65歳以上の住民5000人を対象に20年間行った縦断研究がよく知られています。

 この研究をもとに、いくつかの病気について予防(改善)できる可能性のある歩数をまとめたのが、下の表です。

 ウォーキングは1日1回30分以上で、まずは週3回以上を目指してみましょう。

 歩幅はなるべく広くとることをおすすめしますが、背筋を伸ばして胸を張った姿勢が崩れてしまうのは良くありません。大まかな目安としては、「身長マイナス100センチ」の歩幅がちょうどいい。

 息は弾むけれど会話はできる程度のペースで歩けば、心拍数や血圧が危険なほどには上昇せず、疲労の原因となる乳酸もほとんど蓄積せずに済みます。

 ウォーキングは、習慣化したのをやめるとすぐに健康効果が消失してしまうというデータもあります。一方、歩きすぎは逆効果にもなりうるという研究もあります。一度に無理せず、「継続は力なり」の精神で続けていきましょう。

 ところで、上の表で「動脈硬化や高血圧、糖尿病は、厚労省の6000歩という目標値を達成しても予防・改善できないのか」と思った方もいるかもしれません。

 たしかにウォーキングだけでは筋力を鍛える面では十分とはいえない部分があります。そこで、ウォーキングにプラスアルファで行っていただくために私が提唱しているトレーニングがあります。その名も「ゆるジャンプ」です。